大阪医科大学の浮村聡氏

 小児では軽症のインフルエンザ心筋炎が見逃されている可能性は否定できない――。大阪医科大学の浮村聡氏らが行った小児科におけるインフルエンザ心筋炎の意識調査で明らかになったもので、その成果が第87回日本感染症学会(6月5〜6日、横浜)で発表された。演者らは「特にパンデミック(世界的大流行)時には心筋炎合併例が増加すると考えられ、小児科医への注意喚起が必要である」と指摘した。

 2009年に発生したパンデミック・インフルエンザ(H1N1pdm2009)の際は、浮村氏らが循環器専門医研修施設を対象に実施した全国調査で、H1N1インフルエンザ心筋炎は29例だったことが分かっている。そのうち小児例は5例のみだった。

 なぜ小児例が少なかったのかを明らかにする目的で、演者らは小児循環器診療施設512病院を対象に、インフルエンザ心筋炎の疫学調査(2009/10から3シーズンの後ろ向き観察研究)ならびに診療にあたる医師の意識調査を行った。その結果、疫学調査では286施設から、意識調査では432人から、それぞれ回答が得られた。

 疫学調査の結果、2009/10〜2011/12の3シーズンで、心筋炎は15例の報告があった。ちなみに肺炎は176例、入院は2371例だった。心筋炎15例中、12例が劇症型心筋炎で軽症例は3例だった。

 一方、医師の意識調査では、いくつか注目すべき結果が得られた。まず、インフルエンザ心筋炎症例の経験について尋ねたところ、「経験がある」との回答は13.7%にとどまっていた。また、小児循環器医が常勤しているかとの質問には、「常勤している」が53.7%という状況だった。

 日常診療においてインフルエンザ罹患児を診察した際に合併症として心筋炎を想定して診療にあたるかどうかを尋ねた項目では、「全く想定していない」が6.7%、「重症例で想定」が68.1%、「入院例で想定」が12.6%となっていた。「全例で想定」は8.3%に過ぎなかった。

 外来でインフルエンザ感染症罹患児(入院の適応がない症例)を診察した際、合併症として心筋炎を説明するかどうか尋ねた項目では、「説明する」が2.9%、「説明しない」が65.0%、「症例によって説明する」が31.3%となっていた。「症例による」との回答者にその理由を挙げてもらったところ、「顔色不良」が26.2%、「多呼吸」が21.1%、「四肢冷感」が18.0%、「嘔吐」が9.3%などとなっていた。

 心電図や心臓超音波検査などについても尋ねているが、インフルエンザ罹患児の入院時に心電図をルーチンで実施している小児科医師は3.3%に過ぎなかった。この点について演者らは、「成人では、ほぼルーチンに心電図検査が行われ、また心筋炎のほぼ全例で心電図の変化(特にST-T変化)が認められることを考えると、「小児例ではインフルエンザ心筋炎の軽症例が見逃されている可能性は否定できない」などと考察した。

 心エコーについては、心電図に異常があった場合に行うとした回答が77.0%であり、「心電図が行われなければ心エコーも行われないと考えられる」という実態が浮き彫りになった。

 これらの結果から演者らは、パンデミック時には心筋炎合併の増加が考えられることから、小児科医に対しインフルエンザ心筋炎合併に留意するよう注意喚起する必要がある、とまとめた。