政府は6月26日、新型インフルエンザ等及び鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議を開催し、新型インフルエンザ等発生時における初動対処要領を決定した。政府行動計画及び新型インフルエンザ等対策ガイドラインが確定したことを受けたもの。

緊急事態宣言までの流れを確認


 新型インフルエンザ等発生時における初動対処要領は、政府の緊急事態宣言までの流れを確認したものだ(図1)。

 まず第一歩は、パンデミック・インフルエンザウイルスあるいはSARSなどの新感染症の発生の疑いを察知した段階の対応だ。例えば、海外で鳥などとの接触歴がなく、持続的なヒト-ヒト感染の可能性が確認された場合、厚生労働省は直ちに、内閣情報調査室(内閣情報集約センター)に報告する。

 また、外務省は、このような事態に関連する情報を入手した場合、直ちに内閣情報調査室と厚生労働省に報告・連絡する。

 厚生労働省あるいは外務省を通じて把握された情報は、内閣情報調査室を経由し官邸危機管理センターに伝えられ、危機管理センターの勤務員は、直ちに内閣官房新型インフルエンザ等対策室をはじめとする内閣官房関係部局並びに関係省庁に連絡することになる。

 次のステップは、官邸対策室あるいは官邸連絡室の設置。内閣危機管理監が事態に応じて、危機管理センターに官邸対策室あるいは官邸連絡室を設置する。ここには、厚生労働省をはじめとする関係省庁から連絡要員が派遣され、情報管理の一元化と共有化が図られる。

 3つ目のステップは、緊急参集チームの招集。内閣危機管理監は必要に応じ、内閣官房副長官補や緊急参集チームを集結させ、情報の分析・協議を行い、その結果を内閣総理大臣らに報告する。

 これらの対応と並行する形で、このほど決まった政府行動計画に基づき、関係省庁対策会議が開催される。ここでは、情報の集約と共有、さらに分析が行われ、検疫の強化や感染症危険情報の発表など政府の初動対処について協議する。政府の初動対処については、閣僚会議を開催し、その方針を決定する。

 ここまでの流れは、報告・連絡、官邸連絡室設置、緊急参集チーム招集、関係省庁対策会議、政府の初動対処方針の閣議決定となっている。

 以上は、海外での疑い例の発生を想定したものだが、いざ新型インフルエンザ等の発生が確認された場合は、以下のようなステップを踏むことになる。

 発生の確認は、WHHOの発生宣言もしくはそれに相当する発表に基づく。このWHO宣言・発表があった場合は、政府対策本部が立ち上げられ、政府対策本部の名称、設置場所、期間については国会に報告し、公表する。同時に、国民に対する情報提供を行うことになる。

緊急事態宣言を出す根拠はどこに


 政府対策本部が協議する最大のテーマは、新型インフルエンザ等緊急事態宣言を出すかどうか。

 緊急事態宣言は、特措法では「国内での発生が確認された場合」と定めている。また政令では、(1)国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するもの、(2)全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるとき、の2つの要件を示している。具体的には、(1)重症症例(肺炎、多臓器不全、脳症など)が通常のインフルエンザと比較し相当多くみられる場合、(2)報告された患者が誰から感染したか不明、あるいは報告された患者が誰から感染したかは判明しているが感染の拡大の可能性が否定できないと判断された場合、となっている。

 つまり、病原性が強くかつ社会的混乱を招く恐れがあると判断した場合に、緊急事態宣言は出されることになる。病原性が強くかつ社会的混乱を招く恐れがないと判断した場合は、宣言は出されないということだ。

 病原性の強さの指標の1つは致死率であろうし、急速なまん延は感染力(Reproductive Number;RO、基本再生産数)を根拠とするはずだ。ただ、国内発生当初は致死率もROも不確定であり、そのデータの多くは海外発生例に求めることになる。

 この時点に存在するジレンマは、病原性あるいは感染力の評価において正確性を求めすぎると宣言が遅れ対策が後手に回る危険性があること、一方で見切り発車的な宣言ではおそらく後日に「過剰防衛」だったとの批判を免れない点だ。これを解決するために、宣言の撤回についても議論が行われている。宣言後、時間経過とともに明らかになる病原性や感染力の評価をもとに、随時見直していくというものだ。

 もう一つ緊急事態宣言には、緊急事態措置を実施すべき区域の設定という課題もついて回る。国内発生当初は、原則都道府県単位で緊急事態措置がとられることになる。だが、この区域の設定判断がまた難しい。これだけ人の動きが活発な現代にあって、果たして都道府県単位での設定が可能なのかどうか。

 H1N1pdm2009の際は、5月10日までに兵庫県でまず患者が確認され、その翌週には滋賀県、大阪府で、またその翌週には埼玉県、東京都、神奈川県、京都府、和歌山県、福岡県へと確認地域が一挙に広がっている。区域設定にかけられる時間は、そんなに多くはないということは肝に銘じておくべきだろう。

 区域設定には、設定された都道府県の“感染防衛力”を浮き彫りにするという側面もある。都道府県知事は、自らの自治体での発生だけでなく、近隣の自治体での発生も想定した対策を練り上げておくべきだ。可能であれば、広域連合を前提とした対策であってほしいものだ。

図1 政府の緊急事態宣言までの流れ

新型インフルエンザ等対策ガイドラインが確定


 ガイドラインは、サーベイランス、リスクコミュニケーション、水際対策、まん延防止、予防接種、医療体制、抗インフルエンザ薬など10項目のガイドラインからなる。このうち、サーベイランスと予防接種のガイドラインが今回新たに加わった。

 対策の柱という視点でとらえると、(1)サーベイランス・情報収集、情報提供・共有、(2)予防・まん延防止、(3)医療、(4)国民生活及び国民経済の安定の確保、の4つから構成されている。

 新たなパンデミック・インフルエンザウイルスが発生したり、SARSのようなまったく新しい感染症が流行した場合には、こうしたガイドラインをもとに具体的な対策が動くことになる。


■参考資料
新型インフルエンザ等発生時等における初動対処要領
新型インフルエンザ等対策ガイドライン