抗インフルエンザウイルス薬に関するガイドライン案から

 新型インフルエンザ等対策特別措置法が4月13日に施行となったのを受けて、政府行動計画、新型インフルエンザ等対策ガイドラインなどの作成が進んでいる。現在、パブリックコメントを受け付けているガイドラインについて、その中身を読み解き、実際に法律が発動された場合に向けた課題を探った。今回は抗インフルエンザ薬の備蓄に焦点を当てた。

 抗インフルエンザウイルス薬に関するガイドライン案によると、まず、「国及び都道府県は、政府行動計画及び都道府県行動計画で定めるところにより、 新型インフルエンザ等対策の実施に必要な医薬品として、抗インフルエンザウイルス薬の備蓄を行う」ことが定められていると明記。そのうえで、、国民人口の45%に相当する量を目標に備蓄する方針を示している。

 具体的には、総人口について直近の統計(総務省住民基本台帳に基づく人口[2012年3月31日現在])にあてはめると、備蓄目標は5700万人分となる。この備蓄目標から流通備蓄分400万人分を除き、国と都道府県で均等に備蓄することになる。

 実際の備蓄量はどうか――。厚生労働省によると、2013年4月末までに約6322万人分を確保している。総務省統計局が5月20日に発表した人口推計をもとにすると、平成25年5月1日現在(概算値)が1億2730万人であり、備蓄率は49.7%となっている。2008年時点でイギリスが50%、フランスが53%、オーストラリアが42%、米国が30%であったことを考えると、日本での備蓄は着実に進んできたとみていい。

 すでに目標値を達成していることになるが、今後に向けては2つの大きな課題が指摘されている。

 1つは、今後発生しうる新型インフルエンザウイルスが、備蓄量の割合が高いタミフル耐性ウイルスだった場合への備えだ。

 表1に都道府県別の備蓄状況をまとめた。目を引くのは東京都の対応だろう。都は早くからタミフル耐性ウイルスの出現に備え、リレンザの備蓄もタミフルと同等に進めてきた。現在の備蓄率は全体で60.5%と、都道府県の中では抜きん出て高くなっている。そればかりか、タミフルとリレンザをそれぞれ30.2%ずつとバランスよく備蓄している。国と都道府県の合計でみたリレンザの備蓄率が7.1%、国だけでも2.4%にとどまっていることをみると、都の危機意識の高さが際立っているといえる。

 タミフル耐性ウイルスへの対策としてガイドラインは、「厚生労働省は今後、備蓄薬を追加・更新する際には、タミフル以外の薬剤の備蓄割合を増やすことを検討する」と明記している。

 一方で、新規の抗インフルエンザウイルス薬としてイナビルとラピアクタが登場したが、「現時点では有効期間が比較的短期間であり必ずしも備蓄に適していないことから、従来どおり、タミフルとリレンザの備蓄を継続していく」方針も示した。つまり当面は、実質的に「厚生労働省は今後、備蓄薬を追加・更新する際に、リレンザの備蓄割合を増やすことを検討する」ことになる。

 もう1つの課題は、都道府県でみた場合の備蓄格差をどう解消していくかという点だ。

 たとえば、リレンザの備蓄については、タミフル備蓄量の1割相当を目標に増やしてきた経緯があり、これが1つの目安になる。タミフルに対するリレンザの割合は、国と都道府県の合計で16.6%、国だけで10.0%、都道府県計で24.9%となり、合計で見る限り、一応の目標は達成しているように見える。

 しかし、都道府県別にみると「1割相当」を達成しているのは14都府県に過ぎない(表1)。33道県は5.0%前後にとどまっており、こうした自治体では今後、リレンザの割合を増やしていく対策が求められている。

 ただし、厳しい財政事情から購入費及び保管費が賄いきれない自治体も少なくないのも事実。特別措置法という危機管理を最大の目標とした法律にのっとっての対応である以上、国の支援は「備蓄格差」の解消に欠かせないものとなる。

表1 都道府県別に見た抗インフルエンザ薬の備蓄状況(2013年4月末時点)

都道府県タミフル備蓄量(千人分)リレンザ備蓄量(千人分)計(千人分)備蓄率(%)タミフル備蓄率(%)リレンザ備蓄率(%)リレンザ/タミフル(%)
北海道1032 58 1089 19.918.81.15.6
青森県259 15 274 19.818.71.05.6
岩手県252 14 266 20.219.11.15.6
宮城県426 36 462 20.118.51.68.5
秋田県205 11 216 19.918.81.05.6
山形県220 12 233 20.119.01.15.6
福島県398 21 420 21.120.01.15.3
茨城県549 31 580 19.618.61.05.6
栃木県351 40 391 19.717.72.011.4
群馬県375 21 396 19.918.81.05.6
埼玉県1340 152 1492 20.918.72.111.3
千葉県1143 64 1207 19.618.61.05.6
東京都3840 3840 7680 60.530.230.2100
神奈川県1669 94 1763 19.818.71.15.6
新潟県443 25 467 19.818.71.05.6
富山県204 11 215 19.818.71.05.6
石川県207 21 228 19.717.91.810.0
福井県151 8 160 19.918.81.05.6
山梨県133 40 172 20.115.54.629.8
長野県403 23 426 19.818.81.05.6
岐阜県390 22 412 19.918.81.15.6
静岡県706 39 745 19.918.81.15.6
愛知県1379 77 1456 20.019.01.15.6
三重県347 20 367 19.918.91.15.6
滋賀県252 25 277 19.918.01.810.0
京都府436 83 519 20.417.23.319.1
大阪府1009 725 1734 20.011.68.471.8
兵庫県1041 58 1099 19.718.71.05.6
奈良県168 78 246 17.512.05.646.6
和歌山県185 10 195 19.118.11.05.6
鳥取県104 16 120 20.317.62.715.5
島根県128 15 143 20.118.02.111.7
岡山県363 20 384 19.918.81.15.6
広島県539 30 569 20.018.91.15.6
山口県270 15 285 19.818.71.05.6
徳島県148 8 156 19.818.81.05.6
香川県186 11 197 19.518.41.15.9
愛媛県267 15 282 19.618.51.05.6
高知県138 14 152 20.118.21.810.1
福岡県901 93 995 19.717.91.810.4
佐賀県192 20 212 24.922.52.310.4
長崎県268 15 283 19.818.71.05.6
熊本県228 19 247 13.612.51.08.3
大分県222 12 234 19.618.51.05.6
宮崎県211 12 223 19.518.41.05.6
鹿児島県266 12 278 16.315.60.74.5
沖縄県261 15 275 19.418.31.05.6
都道府県計24203 6017 30220 23.919.14.824.9
国計30000 3000 33000 26.123.72.410.0
国+都道府県計54203 9017 63220 49.942.87.116.6