日本感染症学会は5月17日、中国で確認されている鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染に対応するための暫定的な指針をホームページで公表した。

 それによると、「もっぱら中国で鳥→ヒトと思われる感染が進展している状況」との現状認識を示しつつ、その一方で、日本国内では、「生きた家禽や鳥類と接触する機会は少なく、しかも世界で最も優れたインフルエンザ診療体制があることから、日本国内で鳥インフルエンザA(H7N9)の鳥→ヒト感染が拡大する可能性はかなり低い」との見解を示した。ただし、「中国から来日する旅行者や中国から帰国する日本人が鳥インフルエンザA(H7N9)を発病する危険性が高まりつつある」とし、鳥インフルエンザA(H7N9)の検査・診断の考え方と治療について現時点で可能な対策について提言する、としている。

 診断については、「迅速診断キットはスクリーニングには有用」との認識を示した。しかし、たとえば中国からの帰国者や中国からの旅行者でインフルエンザ様症状を呈し、特に生きた家禽、鳥類との接触のあった場合には、迅速診断では陰性であっても十分に注意が必要とし、「臨床診断が重要」としている。

 また治療面では、「現行のノイラミニダーゼ阻害薬はいずれも有効と考えられる」との見解を示しつつ、WHOや中国CDC、米CDC及び国立感染症研究所が、「このウイルスに対してオセルタミビル(タミフル)とザナミビル(リレンザ)の抗ウイルス活性があることを既に報告・言及している」と紹介した。

 その上で、今回の暫定指針では、感染例(疑い例)には「タミフルまたはペラミビル(ラピアクタ)が推奨される」とした。吸入薬であるリレンザやラニナミビル(イナビル)については、「肺炎病巣がある場合にその病巣へ確実に分布するのかについてのエビデンスがまだ明らかではない」などとし、「現時点では、リレンザやイナビルは原則として推奨しない」とした。なお、重症化が懸念されるような例では、倍量投与、投与期間の延長を推奨した。

 最近の論文で、夫婦間での感染の疑いが指摘されている事例において、早期からのタミフル治療にもかかわらず、治療効果が小さかった症例が報告されている。タミフルあるいはラピアクタが効きにくい症例が存在する可能性もありうることから、今回の指針は、あくまでも暫定的なものとして受け止めておくべきだろう。


■参考情報
・日本感染症学会提言「鳥インフルエンザA(H7N9)への対応【暫定】」