国立感染症研究所は、中国で拡大が懸念されている鳥インフルエンザA(H7N9)のヒト感染について、4月19日時点でのリスク評価を公表した。その中で、ヒトへの感染源として「ブタ」の可能性を指摘した。

 その根拠は、感染した人から分離されたウイルス4株と、上海市鳥市場のハト、ニワトリおよび環境からの分離ウイルス3株の解析結果にある。

 解析の結果、ヒト分離ウイルス4株すべてで、HA遺伝子がヒト型のレセプターへの結合能を上昇させる変異を持っていた。また、すべてのヒト分離株のPB2遺伝子には、RNAポリメラーゼの至適温度を鳥の体温(41度)から哺乳類の上気道温度(34度)に低下させる変異が観察されたという。このことから、感染研は「これらの株については、ヒト上気道に感染しやすく、また増殖しやすいように変化している可能性が強く示唆された」と指摘している。

 A型インフルエンザウイルスの遺伝子構造は、8分節の一本鎖RNAからなり、11種類のタンパク質を規定している(表1)。HA遺伝子(ヘマグルチニン)は、宿主細胞のレセプター(細胞膜に存在する糖タンパク質のシアル酸)を認識する役割を持つ。PB2遺伝子(RNAポリメラーゼβ2)は、ウイルスの複製(増殖)に中心的な役割を果たしている。

■表1  A型インフルエンザウイルスの遺伝子構造

分節:規定するタンパク質
HA:ヘマグルチニン
NA:ノイラミニダーゼ
PA:RNAポリメラーゼα
PB1,PB1-F2:RNAポリメラーゼβ1
PB2:RNAポリメラーゼβ2
NP:核タンパク質
M1、M2:マトリクスタンパク質


 感染研の解析結果から見えてくるのは、感染した人から分離されたウイルス4株はすべて、ヒト化の変異があったということだ。

 一方、鳥および環境からの分離ウイルス3株のHA遺伝子の解析では、様相が違っていた。ヒト型のレセプターへの結合能が上昇していたが、RNAポリメラーゼの至適温度を低下させる変異は観察されなかったのだ。このため感染研は、ヒト分離ウイルスと鳥や環境からの分離ウイルスの間には、「明らかに異なる塩基配列もあり、今回報告された患者に直接に感染したものであるとは考えにくい」との見解を示している。

 では、鳥とヒトの間に存在するのは何か――。

 この点について感染研は、「一般的に、H7亜型のインフルエンザウイルスはブタにおいても不顕性感染であることが知られている」とし、鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスは、ブタなどの哺乳動物の間で症状を示さずに伝播され、「ヒトへの感染源になっている可能性がある」とした。

 今後の対応について感染研は、「中国での感染源、感染経路調査に協力していく必要がある」と指摘している。

■参考情報
中国における鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスによる感染事例に関するリスクアセスメントと対応(国立感染研究所)