昨年サウジアラビアで発生が報告されて以来、じわじわと感染者の報告が積み上がっている新型コロナウイルスNCoVSARS類似)。その報道が世界中で盛り上がりつつある。

 新型ウイルスは呼吸器細胞だけではなく、肝臓にも腎臓にも腸管にもマクロファージにも感染しうることを香港大チームがJ.of infectious diseaseに報告したことから、多臓器不全の可能性や(基本的に呼吸器感染が中心だった)SARSを上回る脅威になる可能性も指摘され、2003年SARSの記憶が生々しい香港・中国系メディアで盛り上がっている。研究チームの記者会見の動画には、現地のあらゆるメディアのマイクが立ち並び、そのインパクトの強さを物語っている1)

 本稿執筆の3月31日時点で、NCoVの感染者数は17人、うち死亡11人となっている。11例目の犠牲者はアラブ首長国連邦アブダビからドイツのミュンヘンにプライベートジェットで治療にやってきた73歳男性。基礎疾患を有していたのだが、移送されてきた側のドイツのメディアが張り切り、このケースがドバイ首長国の王族だとか、ラクダレースに行ったあとに発症しただとか報じている2)3)

 英国では、家族内感染が話題になっている。パキスタンからサウジアラビアのメッカ巡礼に行って感染し、英国に戻った60歳男性が発症。その息子の38歳男性(渡航歴なし)が亡くなり、その後、父親も後を追って天国に行ってしまった4)

 息子は悪性腫瘍の基礎疾患があり、父親のメッカ巡礼はその治癒祈願のためだったとされている。その巡礼中に新型ウイルスに感染して、結果、親子ともども犠牲になってしまった悲劇だ。この事例では、ヒト‐ヒト感染が起こることが証明され、さらに娘も感染するも、こちらは軽症で推移したので、新型ウイルスでは軽症例もある(入院に至らずウイルスをばら撒くケースも有りうる)ことも証明されてしまった。

 この事態を受け、英国のマスコミには連日のようにNCoV関連報道が並び、さらに、これを契機に米国CDCもガイダンスを改訂し、それを機に米国マスコミにも報道が増えた。

 つまり、ここ数週間のあいだに、欧州・米国・香港中国のメディアが盛んに報道し、世界中に事態が知られていく一方で、日本だけが、(一般社会の人々が知らされていないという点で)置いてけぼりのような状況になっているのだ。このような状況で、日本国内で“中東渡航歴を有する一例”がある日発生して社会不安が沸騰して・・・という事態にならないことを願っている。

新型コロナウイルスNCoV(SARS類似)についての報道が世界中に広がっている

■参考情報
1)New coronavirus appears deadlier than Sars, says HKU
2)UAE man dies from novel coronavirus in Germany
3)Araber stirbt in München an Killer-Viru
4)UKのクラスタ父親、薬石効なく・・・新型コロナウイルスNCoV(SARS類似)

過去のパンデミック時と今回の大きな違いの1つは、インターネットによる情報提供が力を発揮していることだろう。2003年のSARSの流行時に、北京で日本大使館医務官だった勝田吉彰氏(関西福祉大学)は、「ちぎっては投げ方式でこまめに情報提供をすることで、現地の日本人社会の不安を和らげた」と振り返る。新型インフルエンザが騒がれるようになってからは、このときの経験を元にブログ「新型インフルエンザ・ウォッチング日記」を立ち上げ、日々情報を発信し続けている。最近はツイッター(http://twitter.com/tabibito12)でも情報発信に取り組んでいる。勝田氏に「今、忘れてはならないこと」を綴っていただく(「パンデミックに挑む」編集)。


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