WHOは2月15日、カンボジアで7例、中国で2例、エジプトで1例、それぞれ新たな鳥インフルエンザH5N1ウイルスのヒト感染例が確認されたと発表した。中国の事例以外は、死亡あるいは病気の家禽類との接触歴が確認されている。積極的サーベイランスによると、いずれの事例においても、これまでのところヒト-ヒト感染は確認されていない。

 カンボジアからは、1月16日以降、7例のH5N1鳥インフルエンザウイルスのヒト感染例が報告された。最初の症例は、8カ月の男児(Phnom Penh地区)で1月8日に発症したことが確認されている。2例目から7例目までは死亡例で、15歳女性(Takeo)と31歳女性(Kampong Speu)が1月21日に、18カ月の女児(Kampong Speu)と9歳の女児(Kampot)が1月28日に、また5歳女児(Takeo)が2月7日に、3歳の女児(Kampot)が2月13日に、それぞれ死亡した(表1)。WHOによると、カンボジアでは、2005年に1例目が確認されてからこれまでに感染例は28例で、そのうち25例が死亡している。

表1 カンボジア、中国、エジプトで確認された鳥インフルエンザH5N1ウイルスのヒト感染例(WHO)

 エジプトの症例は、36歳女性(Behera)で、1月16日に発症、20日に入院し、タミフルによる治療を受けたが26日に死亡している。

 エジプトについては、「パンデミックに挑む」で2012年4月13日に、発症から入院までの日数が長い例に死亡例が目立つことを報告した(参考トピックス、図1)。その際、年齢が高いほど入院までの日数が長くなる傾向が強まっていることを指摘したが、1年後の現在もこの傾向は変わっていないようだ。

 エジプトでは2006年に最初の例が確認されて以降、これまでに170例目の感染例となった。うち61例が死亡している。

図1 年齢、入院までの日数でみたエジプトの感染確認例(2012年1〜4月12日まで。●は死亡例)

 中国の事例は、2月10日に報告されたもので、貴州省の21歳女性(2月2日発症)と31歳男性(2月3日発症、2月8日入院)の2例だった。いずれも危篤状態にあるという。これまでの調査では、2例とも家禽類との接触は確認されていない。この2例は同じ貴州省の事例ではあるが、疫学的な接触は確認されていない。また、それぞれの症例との接触者について追跡調査を続行中だが、2月15日時点で新たな症例は確認されていないという。

WHOが確認した感染例は620例、うち死亡は367例に

 今回の発表によって、WHOが確認した感染例は2003年以降で620例、うち死亡は367例となった(表2)。

表2 WHOが確認したH5N1鳥インフルエンザウイルスのヒト感染例(死亡例)

 この間、年間の確認例数が最も多かったのは2006年の115例。これをピークに年々、確認例は少なくなってきている(図2)。2012年は年間32例で、2003年の4例に次いで少なかった。

 ただし、今年はこれまでに10例を数えており、昨年同時期の9例を越えているのが気がかりな点だ。特に、カンボジアでは、昨年3例だったものがすでに7例と、わずか1カ月余りで2倍以上となっている。死亡した6例すべてで病気や死亡した家禽類との接触が確認されていることから、H5N1鳥インフルエンザウイルスが家禽類の間で蔓延しているとも指摘されている。このため、今後も散発的にヒト感染例が出る可能性は少なくなく、同国の動向には目が離せない。

図2 鳥インフルエンザH5N1ウイルスのヒト感染例の動向(WHOのデータより作成)