北里大学医学部公衆衛生学の和田耕治氏

 インフルエンザワクチンを接種した人の多くは、感染予防効果と重症予防効果を期待していた。一方、接種をしていない人は、時間がない、自分は感染しない、経済的に余裕がないなどをその理由に挙げていた。北里大学医学部公衆衛生学の和田耕治氏らのグループがインターネットを使った調査により明らかにしたもので、成果はこの春に長崎で行われた日本感染症学会で報告された。

 米CDCの予防接種の実施に関する諮問委員会(ACIP;Advisory Committee on Immunization Practices)が2010年に、生後6カ月以上のすべての人についてインフルエンザワクチンを接種することを推奨した。和田氏らは、今後、日本でもこのような方針が示された場合に向けて、一般市民のワクチンに対する認識を把握しておく必要があると考え、調査を実施した。

 対象は20〜69歳の男女で各年代層で男女300人ずつとなるよう設定した。調査方法はインターネットを用いた無記名方式のアンケート調査で、実施時期は2011年6月だった。質問項目は、(1)昨冬のインフルエンザ予防接種の有無とこの冬の接種の意向、(2)接種と非接種のそれぞれの理由、(3)接種の許容金額だった。

 その結果、全体で3129人が回答。うち男性が1572人(50.2%)、女性が1557人(49.8%)となった。年代は、20代が510人(16.3%)、30代が659人(21.1%)、40代が647人(20.7%)、50代が601人(19.2%)、60代が712人(22.8%)だった。昨年度(2010年度)のインフルエンザ予防接種の有無では、有が805人(25.7%)だった。

 予防接種を受けた人にその理由を尋ねたところ、「インフルエンザに感染するのを予防したいから」が83.3%と最も多かった(複数回答、n=805)。次いで「感染しても重症化するのを予防したいから」が63.7%、「同居家族に重症化のリスクが高い人がいるから」が25.4%、「接種の費用補助があったから」が19.9%、「自分がインフルエンザに感染するリスクが高いから」が12.8%などとなった。

 一方、予防接種を受けなかった人にその理由を尋ねたところ、「医療機関に行く時間がなかったから」が27.3%、「自分はインフルエンザに感染しないと思うから」が23.9%、「予防接種のための経済的な余裕がなかったから」が21.9%などだった。「インフルエンザの予防接種の効果を信じていないから」も20.5%と多かった(複数回答、n=2257)。このほか、「予防接種によって起こりうる副反応が心配だから」が15.1%、「注射が嫌いだから」が14.0%と続いた。

 また、インフルエンザ予防接種の許容金額を尋ねてもいるが、「1000円」が36.3%と最も多く、「無料」が26.6%、「2000円」が21.0%、「3000円」が13.7%、「4000円」が2.4%となった。

 来シーズンの接種予定との関連では、全体では25.4%が接種を予定していた。2010年度の接種の有無で比較したところ、接種していた人では「来シーズン接種する」と回答した人が73.0%と高く、「接種しない」は7.3%に過ぎなかった。一方、接種していなかった人では「来シーズン接種する」は9.0%で「接種しない」の60.5%を大きく下回っていた。

 和田氏らは、特に、接種していない人では30%が次のシーズンの予防接種の予定について「わからない」と回答した点を注視。「何らかの介入により、接種する意思を持つようになる可能性がある」と考察した。その上で、今後インフルエンザ予防接種を推進していくためには、一般市民のワクチンに対する認識を考慮して進めていくべきとまとめた。また、コストについても自己負担が軽減されるような制度が必要とコメントした。