福岡大学病院総合診療部の鍋島茂樹氏

 麻黄湯は、細胞の生存に関わるオートファジー自己消化機構)機能を増強させることで、抗インフルエンザウイルス効果を発揮している可能性が示された。In vitroにおいて、麻黄湯のインフルエンザウイルス増殖抑制作用を検討した結果、明らかになった。成果は、福岡大学病院総合診療部の鍋島茂樹氏らが、このほど長崎で開催された日本感染症学会で発表した。

 鍋島氏らは実臨床においてインフルエンザ治療に麻黄湯を使用しており、これまでも感染症学会などで、麻黄湯の有効性について報告してきた。今回は、抗ウイルス作用の機序を解明するため、種々のウイルス排除に大きな役割を果たしているとして注目されているオートファジー機能に焦点を当てた検討を行った。

 オートファジーとは、真核生物に普遍的に存在する基本的な機能で、細胞の恒常性を維持するための重要な機能の一つとなっている。オートファジーを主として担っているのは、細胞内小器官であるオートファゴゾーム。これがライソゾームと融合しオートライソゾームとなることで、消化機能を発揮する。

 たとえば、インフルエンザウイルスが細胞内に侵入した場合、オートファゴゾームがウイルスを取り込み、ライソゾームと結合しオートライソゾームとなることでウイルスを排除する。

 演者らはまず、ヒト肺癌細胞株のA549にインフルエンザウイルス(PR/8)を感染させ、24時間後に培養液中の感染性ウイルス量およびウイルスRNAを測定した。この系で、ウイルスを感染させる際に麻黄湯を加え、コントロールとしてラニナミビルあるいはアマンタジンを加えた場合と比較した。その結果、麻黄湯は、コントロールと同様に、用量依存性にウイルス量を低下させることが分かった。

 こうした麻黄湯の効果は、A/H3N2型、B型のそれぞれのウイルスにおいても、また細胞株を他に変えた場合でも認められた。

 次に、オートファジー機能との関連性を検討。蛍光タンパク質(GFP-LC3)導入A549細胞にPR/8を感染させたところ、蛍光顕微鏡による観察では、細胞質のオートファゴゾームは増加していたが、ライソゾームと融合しているものは少ないことが分かった。つまり、インフルエンザウイルスは、オートファゴゾームとライソゾームとの融合を阻害して、感染を継続いていることが考えられた。

 この系で麻黄湯を添加したところ、オートファゴゾームがさらに増加し、ライソゾームとの融合も確認されたという。

 これらの結果から演者らは、「インフルエンザ感染では、オートファジーの成熟が阻害されている。麻黄湯は、これを解除することで、抗ウイルス効果を発揮していることが示唆された」と結論した。