国立病院機構九州医療センター名誉院長の柏木征三郎氏

 全国の有志が参加しているMLインフルエンザ流行前線情報データベースML-flu-DB)によると、患者報告数は5週をピークに減少しつつある。ただし、タイプ別ではA型が減少する一方でB型の増加が続く。長年にわたりインフルエンザ研究に取り組んできた柏木氏は、「これまでのB型の流行パターンが崩れてきている」との見方を示し、患者数が減少している地域でも今後、B型の流行に留意すべきと指摘。B型が流行した場合の治療薬としては、リレンザが推奨されると語った。

―― 前回は、高齢者施設における集団感染に対する対策と学校の出席停止期間の問題を取り上げました。今回は、B型の流行について先生のご見解をうかがいたいと思います。

柏木 毎年、インフルエンザのシーズンを迎えるたびに、今シーズンはどの亜型のウイルスが流行するかと尋ねられます。私は、「分かりません」と答えています。予測することはとても難しいことなのです。

―― 今シーズンは、AH3亜型(A香港型)が流行の主流でした。先シーズン流行したH1N1pdm09は、国立感染症研究所のインフルエンザウイルス検出速報をみるとほとんど報告がありません。ただ、ここにきてB型の報告が目立ってきているようです(図1)。

図1 国立感染研究所のインフルエンザウイルス検出速報(3月1日現在)

柏木 B型については、2年ごとに流行するというパターンがみられます。しかし、2009年の新型インフルエンザの発生を機に、このパターンも何らかの影響を受けたのかもしれません。

―― 全国の有志が参加しているMLインフルエンザ流行前線情報データベース(ML-flu-DB)によりますと、患者報告数は5週をピークに減少してきました。ただし、タイプ別で見ると、A型が減少する一方でB型の増加が続いています。8週には38.7%と陽性件数の4割近くに達しました(図2)。

図2 タイプ別にみたインフルエンザの報告件数(週単位。MLインフルエンザ流行前線情報データベース;ML-flu-DB)

柏木 先シーズンもB型は流行しました。さきほどの2年ごとのパターンを前提にするなら、今シーズンはB型の流行はほぼないということになります。しかし、ウイルス検出の報告もそうですし、ML-flu-DBの迅速診断キットでの結果をみると今後、B型の流行が懸念される状況にあります。

―― 都道府県によっては、流行のピークに達し、患者さんの数も減ってきています。そのようなところでも再流行に注意しなければならないのでしょうか。

柏木 これまでの流行の主流はA香港型でした。これからはB型の流行の可能性があるわけで、患者さんが減ったから安心かというと、そうではありません。B型の再流行がありうるという前提で警戒を怠らないことだと思います。

B型の治療にはリレンザを推奨

―― ML-flu-DBの結果をみると、迅速診断で判定されるのはB型が増加中です。今後、治療面で留意すべき点はありますでしょうか。

柏木 私は、B型の治療にはリレンザを推奨しています。

―― それはなぜでしょうか。

柏木 日本臨床内科医会インフルエンザ研究班のデータでは、B型の場合、タミフルとリレンザを比較した試験では、リレンザの解熱時間が有意に短いという結果だったのです。また、最近行われた試験では、同じ吸入薬であるイナビルとリレンザについて、投与開始早期の解熱症例の割合を比較したところ、リレンザの方が有意に多いという結果も出ているのです(図3)。つまり、リレンザの方が早く熱を下げることが期待できるわけです。もちろん、吸入が難しい人の場合は別ですし、4歳以下の使用経験は少ないという留意事項がありますが、基本的にはB型にはリレンザでいいと考えています。

図3 リレンザとイナビル投与開始3時間ごとの解熱症例の割合(池松秀之、他.に本臨床内科医会会誌26:215-219.2011より作成)