解熱に必要だった日数に有意差は見られず

―― 治療の結果はいかがだったのでしょうか。

内藤 発熱についてですが、体温(有熱時間)の変化を比較したところ、麻黄湯投与群と非投与群で、解熱に要した日数に有意差は見られませんでした(図2)。治療なしについては、今回の検討では設定しませんでしたので、文献からデータを引用し比較しています。

図2 解熱までの日数(参考文献1より作成。治療なしはDolin,R.:Influenza.current concepts.AM Farm Physician 72-77,1976から)

―― 2群とも、治療開始から2日目と3日目にかけて大きく熱が下がっています。一方、治療なし群では、5日目になってようやく治療群と同水準まで下がっています。

内藤 それから、これは意外だったのですが、関節痛については、麻黄湯投与群の方で、有意に早い改善効果が認められたのです(図3)。

図3 関節炎の改善効果(参考文献1より)

―― 意外だったのですか。

内藤 症状改善については同等であろうとの仮説を立てていましたので、関節痛で麻黄湯投与群が有意だったのは「意外」だったわけです。

―― ほかの症状についてはいかがだったのですか。

内藤 筋肉痛について、投与群の方で早い改善傾向にありましたが、有意ではありませんでした。症例がもっと多ければ、有意差にいたったかもしれません。そのほかの頭痛や咳、倦怠感では、自覚症状が消失するまでの日数に、両群で有意差はありませんでした。

―― 試験では、麻黄湯投与群を麻黄湯単独群、麻黄湯+タミフル併用群に分け、また、非投与群をタミフル単独群とリレンザ単独群に分け、これらの4群でも比較していました。

内藤 麻黄湯単独群が9人、麻黄湯+タミフル併用群が9人、タミフル単独群が13人、リレンザ単独群が6人でした。この4群で結果を比較したところ、以下の結果となりました。

(1)麻黄湯のインフルエンザ感染後の解熱作用は、抗ウイルス薬と同等だった。
(2)麻黄湯は、インフルエンザ感染後の頭痛、筋肉痛、咳、倦怠感の自覚症状において、抗ウイルス薬と同等の効果が認められた。
(3)関節痛に関しては、タミフル単独群よりも有意な改善効果が認められた。

―― 今回は20歳以上の患者さんを対象とした試験だったわけですが、小児だけでなく成人においても、麻黄湯によるインフルエンザ治療の効果が示されたと言っていいのでしょうか。

内藤 抗ウイルス薬と同等の効果が認められたわけですから、今後のインフルエンザ治療の選択肢の1つに、麻黄湯を加えてもいいと考えています。

―― 最後に、麻黄湯を利用するに当たって留意すべきことがあればご指摘ください。

内藤 1点あります。麻黄の成分にエフェドリンが含まれていますので、高齢者に使う場合、特に心臓が弱っている方には注意が必要です。

■参考文献
1)The efficacy of ma-huang-tang (maoto) against influenza(Saita M, Naito T, et al. Health 3,2011;300-303)