神奈川県警友会けいゆう病院小児科、慶應大学医学部客員教授・菅谷憲夫氏(写真:西田香織)

 高齢者施設を中心に、インフルエンザの施設内集団感染が相次いで発生している。中には、ワクチンを接種していた入所者の発症も報じられている。インフルエンザ治療の専門家からは、ワクチンとの反応性が低いウイルス株が流行している可能性もあることから、「早期に抗インフルエンザ薬の予防投与を検討すべき」との声が挙がっている。

 神奈川県警友会けいゆう病院の菅谷憲夫氏は、「最近、院内感染や施設内感染に対する対処法に関する問い合わせが増えている」と話す。「これまでになかったことで、異常なほどだ」とも。

 なぜ、施設内の集団発生が相次いでいるのか。菅谷氏は理由として、「ワクチンとの反応性が低いウイルス株が流行している可能性」と「抗インフルエンザ薬の予防投与の躊躇」を挙げる。

 たとえば横浜市衛生研究所によると、横浜市内で検出されたインフルエンザウイルスAH3型(50株)について、ワクチン株との抗原性解析を行った結果、ワクチン株と類似していると考えられる株は1株(2%)だけで、残りはHI試験で8倍が24株(48%)、16倍が25株(50%)だった。

 思い起こされるのは、昨年11月に三重県保健環境研究所から発せられた報告だ。それによると、2011年10月下旬に同県で発生した集団感染例のウイルス株はAH3亜型で、「抗原解析の結果から今シーズンのインフルエンザワクチン株との反応性が低い抗原性であった」と結論していた。その上で、「AH3亜型インフルエンザウイルスの動向に警戒し、特に高齢者や乳幼児の重症化には注意が必要」と警告を発していた。

 「ワクチンを接種しているから大丈夫」という油断は大敵だ。ワクチンという防御壁が破られた可能性がある以上、施設内で集団感染の兆しがあった場合は、「抗インフルエンザ薬の予防投与を検討すべき」(菅谷氏)なのだ。

 高齢者らの入所施設でのインフルエンザ感染防止に関する対策をまとめた「インフルエンザ施設内感染予防の手引き(2011年11月改訂)」にも、「施設内感染伝播が発生している場合には、早期の抗ウイルス薬予防投薬などを考慮すべきである」と明記している。今一度、施設内の感染対策について見直す必要がある。

■参考情報
インフルエンザ施設内感染予防の手引き(2011年11月改訂)