佐賀大学の原めぐみ氏

 重症心身障害の患者では、H1N1pdm2009ワクチン接種後の抗体保有率は米食品医薬品局(FDA)基準を満たさず、2回接種後も改善が見られないことが報告された。1月末に東京で開催された日本疫学会で、佐賀大学の原めぐみ氏らが発表した。

 重症心身障害児・者にあっては、健常者に比べて、季節性インフルエンザワクチンによる免疫原性が低下していることが報告されている。演者らは、新型インフルエンザワクチン(A/H1N1pdm2009ワクチン)についても同様のことが言えるのかどうかを明らかにするため検討を行った。

 研究は前向き臨床研究で、2009/10シーズンに行った。対象は重症者104人と健常者179人。重症者にはワクチン0.5mLを3週あけて2回接種し、健常者には同量を1回接種した。接種前と1回接種3週間後、2回接種4週間後に血清を採取し、HI抗体価の変動を調べた。評価指標には、幾何平均抗体価(GMT)、上昇倍率(GMTR)、抗体保有率(HI価≧1:40の割合、SPR)、抗体陽転率(SCR)、接種後の副反応出現率などを用いた。

 その結果、重症者のSPRは1回接種後、2回接種後とも、欧州医薬品審査庁(EMEA)基準(SCR>40%、GMT上昇倍率>2.5、SPR>70%のいずれか1つ以上を満たす)は満たしたが、FDA基準(SCRの95%信頼区間下限≧40%、SPRの95%信頼区間下限≧70%)は満たさなかった。2回接種による追加免疫も得られなかったことから、演者らは「重症者では免疫原性が低下していることが示唆された」と結論した。

 また、多変量解析を行ったところ、接種前の抗体価や年齢の影響を補正しても、重症者では健常者に比べて免疫原性が有意に低いことが分かった。なお、重篤な副反応は、重症者、健常者とも認められていない。

 原氏は、「重症者では、ワクチン接種を繰り返すことで免疫原性が改善される可能性があり、今後、検討を続けたい」などと指摘した。