内閣官房新型インフルエンザ等対策室は、新型インフルエンザ対策行動計画の実効性を高めるためとして法制化を目指している。現在、法案骨子のたたき台を公開中で、国民からの意見を求めている段階だ。内容は概ね「行動計画」をベースとしたものだが、今後議論の焦点となると思われる2つの「指示」も盛り込まれた。

 たたき台は法律の骨子案というべきもので、6項目からなるA4サイズ2枚の簡素なものだ。内容の理解のためには、昨年9月に改訂された政府の新型インフルエンザ対策行動計画、および昨年末に公開された法制度の論点整理をあわせて読み込む必要がある。

 今後議論の焦点となると思われるのは、2つの「指示」だ。1つ目は、緊急事態の措置として、「不要不急の外出の自粛の要請、学校、集会等の制限等の要請及び指示」と、これまで要請に留まっていた学校、集会等の制限に、新たに「指示」が加わった。

 学校、集会等の制限を始めとする「Social distancing」(社会的隔離)の有効性については、過去最悪のパンデミックだったスペイン・インフルエンザで実証済み。だが、社会的隔離の実施に当たっては、一般市民の理解と協力が大前提であることを忘れてはならない。「指示」は強制力を持つものとなる。一般市民の理解と協力を無視した「指示」であってはいけないだろう。

 もう1つは医療関係者に直結する。 緊急事態の措置の中に、「医療関係者への医療従事の要請・指示及びこれらに伴う措置、臨時の医療施設の開設及び特例」の1項が盛り込まれている。

 行動計画では医療機関に求められる役割として、「新型インフルエンザの発生時には、診療継続計画に基づき、発生状況に応じて、新型インフルエンザ患者の診療体制の強化を含め、医療を提供するよう努める」と明記されていた。2009年に発生した新型インフルエンザの際は、医療を提供するよう努めようにも、防具や予防薬を始めとする物資面での支援がないのでは続けられないとの意見が医療の現場から挙がっていた。医療従事者への補償問題も大きな課題だった。

 今回盛り込まれた2つ目の「指示」は、「医療従事の要請・指示」と医療関係者を対象としている。論点整理に関連事項を探すと、「医師、看護師、薬剤師の協力確保(被災補償等のあり方を含む) 」がある。「医療従事の要請・指示及びこれらに伴う措置」の措置の中身としては、被災補償が柱となるのは間違いない。

 目的は新型発生時の医療従事者の確保だ。現場で働く医療従事者に対する支援が十分に整うことが前提条件となる。必要な支援を明確にせずに、「指示」に従わない場合の「罰則」を語るようであれば、なおさら医療従事者の確保はおぼつかないだろう。


■参考
「新型インフルエンザ対策のための法制のたたき台」に対する意見募集について
新型インフルエンザ対策のために必要な法制度の論点整理
政府、新型インフルエンザ対策行動計画の改定案をまとめる