近畿医療福祉大学の勝田吉彰氏

 早いもので平成23年もあとわずか。今年のインフルエンザ界十大ニュース、独断で選んでみた。昨年と同様に、学術目線ではなく一般目線で、内外の一般報道に載ったものから選んだ。
 
1.新型インフルエンザ対策行動計画改定
 2011年9月20日、新型インフルエンザ対策行動計画が改定された。新型インフルエンザ対策総括会議の議論などを踏まえたもので、詳細は内閣官房HPへ。

 また、政府関係では、厚労省の「感染症エクスプレス」スタートなどの動きが目新しいところだ。

内閣官房HP
「感染症エクスプレス」

2.豚由来H3N2
 米国で豚由来H3N2の発生が相次ぎ、現在進行形で注目を集めている。本稿執筆現在で発生州はアイオワ、ウエストバージニア、ミネソタ、インディアナ、ペンシルバニア。

 ヒト‐ヒト感染可能性を示唆するケースもあり、次なるパンデミックはこれではないかという声もある。今のところ重症化例はなく抗インフルエンザ薬感受性あり。

http://www.cidrap.umn.edu/cidrap/content/influenza/swineflu/news/dec0911novel.html
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/201111/522583.html

3.インドネシアH5N1クラスタ
 インドネシアのバリ島で鳥インフルエンザのヒト感染の報道が相次いだ。なかでもTembuku Village(Bangli)地区で10歳と5歳の兄弟、そしてその母親が感染死した事例では、すわクラスタ発生とばかりに報道合戦が過熱する騒動となった。この3例については後にWHO公認も出ている。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/201110/522188.html
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/201110/522133.html

4. 鳥インフル遺伝子変異論文掲載で生物テロ脅威?論争
 オランダチームが「鳥インフルエンザH5N1ウイルスの遺伝子を2カ所変化させたところ、フェレットに感染しやすくなった」趣旨の論文を発表、その掲載是非をめぐりバイオセキュリティ専門家筋から物言いがついた。マルタ島でのインフルエンザ会議に端を発したこの論争、報道も過熱気味で、まるで明日にでもテロリストが“改造ウイルス”をばら撒きそうな記事まで出現した。バイオテロはともかく、“うっかりミスでウイルスが漏出する可能性の指摘“は一考の価値ありだろう。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/201111/522582.html

5. OECDがパンデミックを5大脅威に認定
 OECDが、世界経済に影響を与える5大脅威として、サイバー攻撃・財政危機・社会経済的騒乱・磁気嵐と並んでパンデミックを認定。これは2003年SARSの経験もあり、また、ダッカやニューデリーやマニラなどでの流行も想定したもの。

http://www.oecd.org/dataoecd/24/36/48256382.pdf

6. H5N1遺伝子の大幅変異でワクチン接種中止に追い込まれる(ベトナム)
 ベトナム北部中心にH5N1ウイルスの遺伝子変化が拡大し、従来使われてきた中国製ワクチンの効果が認められなくなり、使用中止に追い込まれた。

http://in.reuters.com/article/2011/05/27/idINIndia-57321020110527?rpc=401&feedType=RSS&feedName=worldNews&rpc=401

7. 日本国内で鳥インフルエンザ続発、海外で「鳥インフルエンザパンデミック」と報じられる。
 年初に、日本国内で宮崎・鹿児島・愛知・兵庫(伊丹)・・鳥インフルエンザの発生が続いた。この続発ぶりを「鳥インフルパンデミック(avian birdflu pandemic)」なる単語で表現する海外メディアもあらわれた。

 なお、鳥インフルエンザの隆盛は日本だけでなく、世界的傾向にある。FAOは警告を発し、鳥インフルエンザ対策を要請している。

http://news.xinhuanet.com/english2010/health/2011-01/26/c_13708422.htm
http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/367b2fcaa60acdd1f8c525def9983c26
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/201109/521365.html

8. 感染症流行報道のガイドライン(米国)
 パンデミックはじめ、感染症流行時のリスクコミュニケーションに大きな一歩。米国で医療ジャーナリスト協会と当局との間で感染症流行報道のガイドライン作成。

 当局側に対しては、公表すべき項目、情報を保留できる場合など、報道側に対しては「幅広く背景を探ること」「当局側がすべての質問に答えないとき説明を求めること」「個人のプライバシー尊重」など求めている。

http://www.healthjournalism.org/secondarypage-details.php?id=965
http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/62f0972c03e5d8e64eaa805d19c4dd62

9. 4価ワクチン認可
 B型2種(ビクトリア株、山形株)の両方を組み込んだ4価ワクチンがMedimmune社から認可申請された。現行インフルエンザワクチンはA型2種とB型1種の3価ワクチンであり、B型を2種含む製品は初めて。

http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/8100829c040df6a7de2ca8bd1f5dc963

10. オーストラリアのタミフル耐性発生
 オーストラリア ニューサウスウェールズ州Hunter New England地区でタミフル耐性株がインフルエンザ感染者184例中25例(14%)から検出されたと8月26日付米CDC報告。さらに9月30日付オーストラリア政府発表では33例に増加したが、その後同様の報告はない。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/201108/521305.html
http://blog.goo.ne.jp/tabibito12/e/2b943b7f976c0ddf746176397522776f

 これら以外に、UKのワクチン政策混乱〜接種キャンペーン中止で政争・映画「コンティジョン」公開・ブブゼラでウイルス大量拡散・米プレイボーイマンション集団感染騒動・インフルエンザ感染で「不思議の国のアリス症候群」などが印象に残った出来事だ。

 今年を平成21年、22年と比較すると、総じて大過なく過ぎた年だったといえるのかもしれない。しかし、その内容をみると、将来の火種になるかもしれないこと、将来の備えになることが目立った。平成23年は「比較的地味な年だったが、将来ある時点からふり返るとエポックの始発点があった年」となるのかもしれない。

 皆さま、良いお年をお迎えください。

■平成22年の十大ニュース
・http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/pandemic/topics/201012/517880.html

 過去のパンデミック時と今回の大きな違いの1つは、インターネットによる情報提供が力を発揮していることだろう。2003年のSARSの流行時に、北京で日本大使館医務官だった勝田吉彰氏(近畿医療福祉大学)は、「ちぎっては投げ方式でこまめに情報提供をすることで、現地の日本人社会の不安を和らげた」と振り返る。新型インフルエンザが騒がれるようになってからは、このときの経験を元にブログ「新型インフルエンザ・ウォッチング日記」を立ち上げ、日々情報を発信し続けている。最近はツイッター(http://twitter.com/tabibito12)でも情報発信に取り組んでいる。勝田氏に「今、忘れてはならないこと」を綴っていただく(「パンデミックに挑む」編集)。

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