徳島大学疾患酵素学研究センター長の木戸博氏

 脂質異常症の治療薬の1つであるベザフィブラートが、インフルエンザ脳症の治療に有用であることを示唆する研究成果が報告された。徳島大学疾患酵素学研究センター長の木戸博氏らの研究グループの成果で、このほどMolecular Genetics and Metabolism誌に論文を発表した。

 木戸氏らは、インフルエンザに感染したときに現れる最初の生体反応が炎症性サイトカインの上昇であることに着目。こうしたサイトカインがウイルスの感染を阻止する方向に働く一方で、体内代謝、特にエネルギー代謝の流れを大きく変動させていることを明らかにしてきた。この変動は生体の適応応答とも考えれるが、代謝変動に対応しにくい遺伝子多型の人あるいは基礎疾患のある人では、エネルギー代謝の恒常性の破綻を引き起こし重症化につながっていると考えられるという。

 例えば、小児のインフルエンザ脳症では、脂肪酸代謝系に潜在的な弱点(遺伝子多型)がある場合、脳の血管内皮細胞のエネルギー代謝障害が高頻度に発現していることも分かっている。

 このエネルギー代謝障害の正常化が治療の決め手になると考えた木戸氏らは、様々な治療薬を探索し、脂質異常症の治療薬の1つであるベザフィブラートに治療の可能性があることを突き止めた。今回発表した論文では、健常人およびインフルエンザ脳症の患者らの線維芽細胞を使い、ミトコンドリアのエネルギー代謝に及ぼすベザフィブラートの影響を検討。インフルエンザ脳症においては、ベザフィブラートにエネルギー代謝障害を正常化する可能性があることを明らかにした。

 まだ細胞段階の検討結果ではあるが、インフルエンザ脳症の新たな治療法につながる成果であり、今後の研究に期待したい。


☆ テーマサイト「パンデミックに挑む」では、最新情報をお届けする「パンデミック・アラートメール」を配信しています。登録はこちらからどうぞ。