政府は8月15日、新型インフルエンザ関係省庁対策会議を開き、新型インフルエンザが発生した場合の国としての対応をまとめた行動計画の改定案を了承した。現在、国民の意見を募っており、9月以降に政府として決定する見込み。

 今改定は、2009年4月に世界的に流行した新型インフルエンザへの対応の検証を踏まえてまとめられた。最大の特徴は、「病原性あるいは感染力に応じて実施すべき対策を決定する」とした点。具体的には、病原性あるいは感染力に応じて、行動計画に盛り込まれた対策の中から実施すべき対策を選択することになる。ただ、対策の実施、あるいは縮小や中止を決定する際の判断の方法については、「適宜、ガイドライン等に定めることとする」とし、今後の検討に委ねた。

 こうした柔軟な対応は、米国の「流行の深刻さ」に応じた対策を意識したものと言える。米国では、致死率をもとにパンデミックの被害規模を5段階で評価し、「Pandemic Severity Index」(図1)という指標(カテゴリー)として提示することになっている。患者の自宅待機や学校の臨時休業、不要不急の集会などの自粛や企業の不要不急の業務縮小などのソーシャルディスタンス関連の対策は、それぞれのカテゴリーに応じて実施することになっている。今後示されるガイドラインなどで、どのような指標が用いられるのか注目したい。

図1 「流行の深刻さ」を示すPandemic Severity Index(CDC)

 今回の改定案では、海外発生期において対策の前倒しが行われた。具体的には、海外で新型インフルエンザが発生した疑いがある段階で、WHOがフェーズ4を宣言する前であっても検疫強化などの水際対策を開始するとしている。また、国内発生に備えた医療体制の準備においても、現行の「発熱外来」を「帰国者・接触者外来」と名称変更し、設置を現行の国内発生期から海外発生期に前倒しした。

 海外発生期においては、原液保存中のプレパンデミックワクチンを製剤化し、接種を開始することも盛り込まれた。ここでいうプレパンデミックワクチンは、新型インフルエンザが発生する前の段階で、鳥インフルエンザウイルスを基に製造されるものを指す。日本においては、プレパンデミックワクチンの製造に、H5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスを用いている。このワクチンについて改定案では、「H5N1亜型以外のインフルエンザには有効性がなく、また、新型インフルエンザウイルスがH5N1亜型であったとしても、その有効性は不確かである」との認識を示しつつも、「新型インフルエンザ発生後にパンデミックワクチンが供給されまでの間は、国民の生命を守り、最低限の生活を維持する観点から、医療従事者や社会機能の維持に関わる者に対し、プレパンデミックワクチンの接種を行うことが重要であり、プレパンデミックワクチン原液の製造・備蓄を進めることとする」とした。「有効性は不確か」としながらも「接種を行うことが重要」としている点については今後、議論を呼びそうだ。

 国内発生期については、「地域未発生期」「地域発生早期」「地域感染期」の3段階に分けて都道府県単位で柔軟に対応するとした。これは、都道府県が柔軟に対策を選択できるようにするもので、2009年発生の新型インフルエンザ対策の反省にたったものと評価できる。

 このほか、パンデミックワクチンの接種では、「国産ワクチンの確保を原則とし、必要に応じて輸入ワクチンも確保」するとした。また、病原性が高い場合は、政府の対策本部で優先順位などを決定し、公費で集団接種することも盛り込んだ。なお、ワクチン製造については、細胞培養法などの生産ラインの整備を推進することも明記された。

■参考資料
「新型インフルエンザ対策行動計画」の改定のポイント
新型インフルエンザ対策行動計画の見直し案(改定案)
「新型インフルエンザ対策行動計画」(改定案)に対する意見募集(パブリックコメント)について