昨シーズンは、日本でも家禽類において高病原性鳥インフルエンザの発生が相次いだ。最も発生農場が多かった宮崎県は、なぜ多発したのかその原因究明に取り組んできた。このほど鳥インフルエンザウイルスを鶏舎内に持ち込んだのは、ネズミを始めとする野生動物、あるいはヒト、さらに鶏用飲用水にも可能性があるとする報告書を発表した。

 2010年11月の島根県での発生以降、鹿児島県、大分県、愛知県、和歌山県、三重県、宮崎県、奈良県、千葉県の9県24農場で発生し、計約185万羽が処分された。最も多かったのは宮崎県で、肉用鶏10農場、採卵鶏1農場、種鶏2農場の計13農場で約101万羽が処分された。

 なぜ宮崎県で多発したのか。同県では、農政水産部の畜産・口蹄疫復興対策局が中心となり、専門家らを交えた検討会を開催し、7月25日付けで「宮崎県における高病原性鳥インフルエンザの感染経路等に関する検討報告書」をまとめた。

 それによると、まず、宮崎県に鳥インフルエンザウイルスを運んできたのは、「渡り鳥を含む野鳥と考えられる」と結論付けた。日本野鳥の会宮崎支部による野鳥生息状況調査により、発生農場周辺に野鳥が飛来していることが明らかとなり、さらに集団飛来地の調査では例年以上に多くの野鳥が確認された。また、全国的に白鳥やナベヅル、キンクロハジロなどの渡り鳥において高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染が確認される中、宮崎県でもハヤブサ、カイツブリ、オシドリでの感染事例が7件確認されていた。これらの状況証拠が、「渡り鳥を含む野鳥」運搬説を支持する根拠としている。

 しかし、鳥インフルエンザウイルスを鶏舎内に持ち込んだ要因については、「13農場すべてに共通したものは見いだすことができなかった」とした。ただし、すべての農場で、防鳥ネットの破れや鶏舎壁の隙間が確認され、さらに野生動物が侵入可能な網目サイズの金網が設置されていたことも明らかになった。こうした環境面の不備から、「ネズミなど野生動物が侵入した可能性はあった」と指摘した。事実、13農場中9農場でネズミの侵入が確認されており、渡り鳥の糞便を介して、野生動物がウイルスを鶏舎内に持ち込んだ可能性はあると指摘している。なお、鶏舎内への野鳥の侵入は確認されていないという。 

 報告書では、農場管理者及び従業員らの「ヒト」が持ち込んだ可能性についても検討した。13農場中5農場で、鶏舎入口付近での鶏の死亡例が多く見られたことが疑う理由だった。しかし、鶏舎内に入る際に、13農場中9農場では鶏舎専用の長靴を使用し、また1例を除くその他の農場では農場専用長靴を使用して鶏舎ごとの踏込消毒を併用していた。これらを根拠に、「ヒトが鶏舎内にウイルスを持ち込んだ可能性を否定することはできないが、その可能性は低いと考えられる」と結論した。

 鶏用の飲用水も検討の対象だった。13農場中2農場で、山水や湧水を飼養鶏の飲用水として未消毒のまま利用していたからだ。これらの農場では、この鶏用の飲用水が感染源となった可能性も考えられるとした。

 結局のところ、鳥インフルエンザウイルスを鶏舎内に持ち込んだ要因を特定することはできなかったわけだが、渡り鳥が鳥インフルエンザウイルスを運んでくることを前提に発生防止対策に取り組むべきと強調した点は重要だ。宮崎県は、渡りのシーズンには、鳥インフルエンザがいつ発生してもおかしくないという前提に立って、対策を進めるとしている。また、感染の原因として「野生動物の侵入」「飲用水」「ヒト」を介した感染の可能性が浮かび上がったことから、まず第一歩として、これらの可能性を限りなくゼロに近づけるための対策に取り組むとしている。こうした対策が宮崎県以外にも広がり、オールジャパンで対応する体制に発展してほしいものである。


■参考資料
宮崎県における高病原性鳥インフルエンザの感染経路等に関する検討報告書