フル装備の防護服に身を包んだ着岸検疫を担う検疫官

 検疫記念日である7月14日。横浜市港湾局主導による新型インフルエンザ対策の水際対策訓練が行われた。前回報告した図上訓練に続き、着岸検疫、患者搬送、インフルエンザ感染防止用具の着脱などの現場対応の訓練が目的だった。

 マニュアルによると、現場対応は、想定着岸日の前日のバース(船舶着岸施設)決定後から、すでに始まっている。例えば、横浜市海務課では、着岸に必要となる水先人、タグボートなどの手配に入っている。また、賑わい課と南部・北部公社では、搬送手順を確認することになっている。その中で、インフルエンザ感染防止用具の準備、船舶着岸時間および関係者の集合時間と集合場所の確認、搬送手順の確認などが行われる。同時に、ふ頭内の事業者などへの情報提供も実施することになる。

 想定では、インフルエンザ様の有症者が確認されたYOKOHAMA丸がバースに着岸するのは7月14日10:40。関係者が現場に集合する時間は10:30。賑わい課と南部・北部公社の担当者は、10:00に現地入りし、制限区域への入構を円滑に行うための配置に着くことになっている。

 ゲート出入口に集合する時間が10:10。この時点で、マニュアルでは、南部管理課運営係と賑わい課と南部・北部公社の担当者らによる関係機関と役割分担の確認が行われることになっている。

 今回の現場対応では、こうしたマニュアル上の各担当課の動きを確認すると共に、実際に防護服装着、本船着岸、着岸検疫、制限区域設定、有症者下船、患者搬送、防護服脱衣の訓練が行われた。

 まず、防護服の装着方法の説明に従って、参加者が実際に装着した。今回、重症の患者と軽症の患者が想定されたが、着岸検疫を担う検疫官は、フル装備の防護服に身を包んでいた。一方、船から重症者を搬送する業務を担う検疫官(港湾局の職員が担当)は、ゴーグル、マスク、手袋、ガウンなどを装着した。

送排気機能が付いたDIFトランスバック(担架)で搬送される重症患者

 炎天下ではあったが、風もときおり強く吹いていた。そのため、ガウンのすそがはだけてしまう場面も。すかさず参加者の女性が搬送車両に戻り、ガムテープをとってきた。そして、仲間と手分けして、背中からすそにかけてガムテープで止めていった。訓練終了後にその理由を尋ねると、感染の危険性を可能な限り低くしたいからとの回答があった。別の男性が「ガムテープはこうした現場では必需品」と解説。これも訓練の賜物なのかもしれない。

 当該船舶の着岸訓練は、本船に見立てた港務艇「おおとり」が着岸し行った。フル装備の防護服に身を包んだ検疫官が乗船。同時に、水上警察署による立入制限区域の設定が行われた。具体的には、カラーコーンを使い、船舶出入口半径10mを制限区域に設定した。

 重症者は、搬送班が送排気機能が付いたDIFトランスバック(担架)で搬送。船から運び出したところからはじめ、救急車で待ち構える救急隊員のところまで搬送した。こちらもフル装備の救急隊員が引き受け、救急車に乗せた後は、近くの病院へ運んでいくという設定で訓練を行った。

 次に、DIFフードを装着した軽症者がフル装備の検疫官に付き添われて下船。そのまま搬送車両(検疫所の車両)に乗り込み、パトカーの先導で市民病院への搬送までを行った。

 その後、防護服脱衣の訓練が行われ、一通りの現場対応訓練が終了した。

フル装備の検疫官に付き添われて下船するDIFフードを装着した軽症者

 南部管理課運営係の井上雄太氏によると、訓練後行われた講評では、「横浜市港湾局単独ではなくて、今回のように関係機関が連携し、訓練を継続的に実施することが大切」との指摘のほか、「今回は乗組員15人という貨物船を想定したが、訓練では最悪の事態を想定することが必要となるため、何百人という乗客・乗務員が対象となる外航客船を想定した訓練を実施すべき」などといった積極的な意見も出された。また、「防護服の着用については、きめ細かい指導を日ごろからした方がいい」との声もあり、訓練の大切さを改めて確認したという。

 「のどもと過ぎれば熱さ忘れる」の教訓を引き合いに出すまでもないが、横浜市港湾局が検疫記念日に、こうした訓練を行ったことはとても意義深いものに違いない。「横浜発」の検疫の精神が全国に広がっていってほしいものである。

防護服脱衣の訓練に取り組む参加者。今、こうした地道な取り組みが求められている