インフルエンザシーズン入りの南半球、いち早くトップを走っているのが南アフリカ共和国だ。すでに15人の犠牲者が発生し、「パニックにならないで」と平静を呼びかける報道も出てきている。この国の名物といえば、W杯で一挙に有名になった「ブブゼラ」。これが通常の“絶叫”の180倍〜570倍のウイルス拡散器になると報告されている。実際、2012年ロンドン五輪でも、ウインブルドンでも締め出しを食らうという嫌われぶりではあるのだが・・・。

 6月17日付WHOアップデートで南アフリカにおけるインフルエンザ様疾患の激増ぶりが報じられている1)。今季の主役はインフルエンザ(H1N1)2009だ。この国の突出ぶりはCIDRAP(ミネソタ大学感染症情報センター)が「ドラマチックなスパイクを示している唯一の国(the only country to see a dramatic activity spike)」と表現している2)。執筆時点で、すでに15人の犠牲者発生が報じられ3)、衛生当局は症状が出たら速やかに医療機関を受診するよう呼びかけている。

 この「ドラマチックなスパイクを示している唯一の国」の中では緊張感も高まりつつあるようだ。表1で示されるごとく、昨シーズンの主役はB型だった現地の人々にとってみればインフルエンザ(H1N1)2009が大規模拡大するのは、いわば「新型インフルエンザがやって来た!状態」だろう。保健省は人々に「パニックにならないよう」にと呼びかけ、インフルエンザ(H1N1)2009はすでに季節性化していることの説明や予防法の啓発に追われている4)5)

表1 インフルエンザウイルスのタイプ別に見た南アフリカの流行状況(WHO)

勝田吉彰氏(近畿医療福祉大学)

 ところで、南アフリカといえば「ブブゼラ」を連想する人も多かろう。昨年W杯の応援合戦で、スタンド中から「ぶぅぶぅぶぅぅぅぅぅ〜」と大音響を響かせていた様子は、中継でご覧になった人も多いと思う。このブブゼラ、「大規模ウイルス拡散器」にもなり得るのだと、London School of Hygieneが警告している6)。ブブゼラを思い切り吹かせて空気中に拡散するエアロゾル数を計測したところ、ブブゼラを使わない“絶叫”に比べて空気1リットル当たり約180倍、1秒当たり約570倍の噴出が確認された。さすがに、これを快適に思う人は少なく、2012年ロンドンオリンピックでは締め出されることが検討され7)8)、テニスのウインブルドン大会ではすでにお断りとなっている9)。とはいえ発祥の地では自由に使える。

 今回の「ドラマチックなスパイクを示している唯一の国」状態と、「“絶叫”の180倍飛沫拡散器」との間に因果関係を示すエビデンス云々は、まだあろうわけもないが、わが国でも英オリンピック委員会のごとく、明確に制限する検討ぐらいはしておいて良いのではなかろうか。

■参考資料
1)Influenza update - 17 June 2011
2)WHO: South Africa battling flu; few other global hot spots
3)SA urged to seek treatment for flu
4)Compiled by the Government Communication and Information System
5)Health Dept warns people against panic if they catch the H1N1 virus
6)ブブゼラは絶叫の500倍危険な猛烈ウイルス拡散器!(UK)n
7)London Olympics consider ban – Yes Please ban the Vuvuzela! – commentary by E. Hoogensteyn
8)London Olympics may ban vuvuzelas and curb mobile use
9)Vuvuzelas banned from Wimbledon by All England Club

 過去のパンデミック時と今回の大きな違いの1つは、インターネットによる情報提供が力を発揮していることだろう。2003年のSARSの流行時に、北京で日本大使館医務官だった勝田吉彰氏(近畿医療福祉大学)は、「ちぎっては投げ方式でこまめに情報提供をすることで、現地の日本人社会の不安を和らげた」と振り返る。新型インフルエンザが騒がれるようになってからは、このときの経験を元にブログ「新型インフルエンザ・ウォッチング日記」を立ち上げ、日々情報を発信し続けている。最近はツイッター(http://twitter.com/tabibito12)でも情報発信に取り組んでいる。勝田氏に「今、忘れてはならないこと」を綴っていただく(「パンデミックに挑む」編集)。

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