2009年に発生した新型インフルエンザに対するA/H1N1pdmワクチンは、医療従事者らに対して優先接種が行われた。しかし、免疫応答不良例が確認されるなど、十分な免疫原性があったとは言えないとする成績が報告された。財団法人田附興風会医学研究所北野病院羽田敦子氏らが4月21、22日と東京で開催された日本感染症学会で発表した。

 優先的なA/H1N1pdmワクチン接種は、医療従事者を守ることで、新型インフルエンザに対する医療体制を維持することを目的としていた。演者らは、今回使われたワクチンの効果を評価するために、北野病院の小児科医師を対象に免疫原性の調査を行った。

 対象は2009年新型インフルエンザに罹患していない小児科医師16人。男性10人、女性6人で、年齢は27〜49歳(平均34歳)だった。ワクチンは、アジュバントを含まない不活化新型インフルエンザワクチン(化血研:Lot.No.SL03B)で、HA抗原15μg標準1回投与量を単回接種した。A/H1N1pdm接種日は2009年10月22、23日で、その後に季節性インフルエンザワクチンを接種した。

 評価のための検体には、接種前と接種3週間後および5カ月後に採取した血液を利用。HI抗体価および中和抗体価を測定(測定は大阪府立公衆衛生研究所)し、インフルエンザ評価基準(CPMP/BMP/214/96)に沿って評価を行った。

 その結果、接種3週後で見た場合、全体の抗体陽転率は43.8%、幾何平均抗体増加率は5.38で、インフルエンザ評価基準(それぞれ>40%、>2.5)を満たしていた。しかし、抗体保有率は43.75%と基準の>70%を満たしていなかった。これを対象者の年齢に着目し、35歳未満(9人)と35歳以上(6人)でみたところ、35歳未満群では抗体陽転率、幾何平均抗体増加率、抗体保有率とも、評価基準を満たしていた。一方、35歳以上群では、すべてにおいて基準を満たしていなかった。

 演者らは、今回のワクチンは不十分な免疫原性だったと結論。発症例が1例あったため、発症阻止の面からも問題が残ったと指摘した。特に、35歳以上で免疫応答が低かったことを踏まえ、免疫応答の不良な高年齢群があると考えられることから高年齢者のワクチン接種には注意が必要などと考察した。また今後については、最前線で働く医療従事者を守り医療体制を維持するという本来の目的を達成するため、アジュバントの導入も含め、確実な免疫原性のあるワクチン開発が望まれるとした。