図1 ワクチン接種の有無とA/H1N1pdm罹患率(発表から作成)

 新型インフルエンザA/H1N1pdmワクチンは、医療従事者の感染予防に有効だったことが報告された。ワクチン接種者の罹患率は1.5%だったのに対し未接種者の罹患率は5.2%で、ワクチン接種者の方が有意に罹患者の割合が低かった。千葉大学感染症管理治療部の猪狩英俊氏らが2月18日、19日と横浜で開催された日本環境感染症学会で発表した。

 千葉県では、A/H1N1pdmワクチンは2009年10月中旬以降、医療従事者を第一優先として接種が開始された。接種時期がちょうど感染拡大期に重なるという異例の事態だったこともあり、演者らはワクチンの効果および安全性の検討が必要と判断、今回の解析を行った。

 対象は千葉大学医学部附属病院の職員1854人。このうちA/H1N1pdmワクチン接種者は1567人、未接種者は250人だった。ワクチン接種前にA/H1N1pdmに罹患した37人は除外した。2009年9月以降2010年3月まで、全職員を対象に、インフルエンザの罹患について調査を行った。

 インフルエンザの診断基準は、簡易診断キットの陽性者、および家族や同僚にインフルエンザ感染の確定者がおり臨床症状からインフルエンザと考えられる人とした。同時に副作用調査も実施し、チェックシートを配布し接種後7日までの状態を把握した。

 その結果、調査期間内のインフルエンザ罹患者は全体で37人で、ワクチン接種者では1567人中24人(罹患率1.5%、95%信頼区間:1.0-2.3)、ワクチン未接種者では250人中13人(罹患率5.2%、95%信頼区間:2.8-8.7)がそれぞれ罹患した。ワクチン接種の有無で見た場合、接種者の方が有意に罹患率が低いという結果だった(p=0.001、図1)。

 20歳台(657人)に限ってみると、ワクチン接種者の615人中16人が、ワクチン未接種者の42人中5人が罹患した。罹患率は前者が2.6%(95%信頼区間:1.5-4.2)、後者が11.9%(95%信頼区間:5.2-25.6)と、やはりワクチン接種者の方が有意に低かった(p=0.008)。30歳以上でも同様の結果だった。

 多重ロジスティック解析の結果、A/H1N1pdmに感染するリスクは、20歳台(調整オッズ比:3.4、95%信頼区間:1.8-7.6、p<0.001)、外来部門(調整オッズ比:3.5、95%信頼区間:1.4-9.0、p=0.009)で高いという結果になった。一方、ワクチン接種の調整オッズ比は0.2(95%信頼区間:0.1-0.4、p<0.001)だった。20歳台や外来部門での罹患リスクが高いことについて演者らは、優先順位を決定する上で考慮すべき点とした。

 一方の副作用調査については、1060人からアンケートを回収した(回収率67.6%)。その結果、「Severe」は1%、「Moderate」も8%に過ぎず、ほとんどが「Mild」(43%)あるいは「なし」(48%)だった。演者らは、副作用の報告は比較的高かったが、ほとんどは軽度であり重篤な副作用は見られなかったことから、ワクチンの安全性が示されたと結論した。


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