国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター横浜衛生研究所横浜市などは2月18日、ペラミビル治療患者からH275Y耐性ウイルスを検出した事例について報告した。ペラミビル治療患者からの検出例は、2009年9月から実施されている抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスにおいて初めてとなる。ただし、IC50値の上昇は感受性株の約60倍と、オセルタミビルの約260倍に比べて低い水準にある。

 発表(1)によると、患者は5歳の幼稚園児で、インフルエンザワクチンの接種は受けていなかった。39から40度の高熱が続いたため、休日急患、内科、耳鼻科などを受診した。しかし、迅速診断キットによる検査ではインフルエンザA、B型ともに陰性であり、解熱剤や抗菌薬などが処方されたがオセルタミビルは処方されなかった。1月13日に発熱と肺炎で入院。入院時の迅速診断キットの検査ではマイコプラズマ陽性、インフルエンザA、B型陰性であったため、1月13日からマクロライド系抗菌薬が投与された。投与3日目に呼吸状態が悪化し、再度迅速診断キットで検査したところ、この時点で初めてインフルエンザA型陽性となった。このため、1月15日にラピアクタを投与された。その後、患者はステロイド治療などにより症状が改善し、1月24日には退院した。家族内感染や幼稚園での流行はなく、散発例だったことが確認されている。

 この症例から1月19日に採取された咽頭ぬぐい液をもとに、横浜市衛生研究所でリアルタイムPCR検査を行ったところ、A/H1N1pdmと判定された。ウイルス分離が行われ、A/Yokohama/29/2011株と命名された。オセルタミビル耐性株に特徴的なH275Y耐性マーカー検査では、275H/Yの混合ウイルスと判定された。

 感染研究所で薬剤感受性試験を実施したところ、オセルタミビルに対するIC50値が感受性参照株より約260倍上昇し、ペラミビルに対しては約60倍上昇しており、両薬剤に対する感受性が低下していた(表1)。一方、ザナミビルおよびラニナミビルに対するIC50値は、感受性参照株と大差なく感受性を保持していた。

表1 薬剤感受性試験の結果(感染研究所のデータを元に作成)

 抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスでは、2009年9月から2011年1月末までに8364株の解析が行われ、これまでに86株のH275Y耐性株を検出している。耐性株86株が検出された事例の薬剤投与歴をみると、オセルタミビル治療投与57例(66%)、オセルタミビル予防投与12例(14%)、薬剤未投与16例(19%)、ペラミビル治療投与1例(1%)だった。

 ただし、IC50値の上昇がオセルタミビルで約260倍だったのに対しペラミビルでは約60倍に過ぎず、また海外の報告でも、使用中にH275Y変異した株では変異前に比べてIC50値の上昇がオセルタミビルが約300倍であったのに対しペラミビルが60倍程度だった(2)ことから、専門家の間では臨床上はあまり大きな問題にならないのではとの見方もある。


■参考文献
(1)・<速報>ペラミビル治療患者からのH275Y耐性ウイルス検出事例報告
(2)・Rapid Selection of Oseltamivir-and Peramivir-Resistant Pandemic H1N1 Virus during Therapy in 2 Immunocompromised Hosts (Matthew J. et al. CID 2010; 50 (9): DOI: 10.1086/651605