新型インフルエンザウイルスA/H1N1pdmウイルス)が季節性に移行していく際には、病原性の高い株の出現に気を配る必要がある。A/H1N1pdmウイルス株と季節性ウイルス株を使った細胞培養の実験結果から、今後、病原性が高くなる可能性は十分にあるとの報告があった。米セント・ジュード小児研究病院のMariette Ducatez氏とNatasha Ilyushina氏らが、昨年末、米国微生物学会のオンライン雑誌「mBio」で発表した。

 Ducatez氏らは、A/H1N1pdmウイルス株として新型インフルエンザの流行初期に検出されたA/Tennessee/1-560/2009 (TN/560)を、また季節性ウイルス株としてA/New Jersey/15/2007 (NJ/15)を使った。これらを一緒に正常ヒト気管支上皮細胞(NHBE)で培養し、両株の間で遺伝子交差が見られるのか、あるいは遺伝子変異は起こるのか、などを観察した。

 その結果、10回連続的継代培養後には、培養開始時のTN/560とNJ/15の割合が90%対10%の場合に、「L295P」と「K154Q」の変異が見られるウイルス株が出現した。A型インフルエンザウイルスの遺伝子は、8本の分節(HA、NA、PA、PB1、PB2、M、NP、NS)からなるが、「L295P」はPA分節、「K154Q」はHA分節上にそれぞれ確認された。

 このウイルス株(G1株)を精査したところ、8本の分節はすべてTN/560由来のものだった。つまり、G1株は、新型インフルエンザ株のTN/560株で突然変異の起こった株であった。

 一方、培養開始時のTN/560とNJ/15の割合が10%対90%と割合が逆転した場合には、「D87N」の変異が見られるウイルス株(G2株)が出現した。こちらも精査したところ、「D87N」はPB2分節上にあることが分かった。さらに8分節のうち、HA分節だけがNJ/15由来となっていた。つまり、G2株は、新型インフルエンザウイルスと季節性インフルエンザウイルスの合の子の遺伝子をもった遺伝子再集合株であった。

 これらのG1株、G2株の特徴を探るため、フェレットを使った動物実験で、複製能力や病原性、臓器分布などを調べたところ、G1株、G2株とも、もともとの株であるTN/560あるいはNJ/15を上回る複製能力があり、また病原性も高いことが明らかになった。

 また、突然変異に着目して生物学的な特徴を調べたところ、37℃でポリメラーゼ活性が高まり、かつヒト型のインフルエンザウイルスがレセプターとして認識するα2-6結合型のシアル酸との結合能も高くなっていることが分かった。

 Ducatez氏らはこれらの結果から、A/H1N1pdmウイルスは、突然変異を起こしたり、季節性ウイルスと遺伝子が交差したりすることで、より病原性の高い株が出現する可能性は十分にあると結論付けた。


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