ここのところ、英国から不穏な報道が連日入ってくる。A/H1N1pdmが大暴れしているというのだ。特に重症化例の多さが目立ち、ICU入院例が3日間で5割増えたとか、合併症なき青年層の重症例が続々とか、ECMOを必要とするケースが昨年パンデミック最盛期の6割増だとか、緊張を強いられる話題が続く。

 今季に入り、インフルエンザ様疾患の増加が言われてきたこの国だが、12月第三週から緊張が一気に表面化した。インフルエンザ罹患による重症例が激増し、ICU入院例は12月20日の302例から23日までのわずか3日間で460例へと5割も増えてしまい、ICUベッドの約15%をインフルエンザ重症例で占めてしまった1)。ECMOが必要なケースも19例にのぼり2)(これは昨年パンデミック時ピークの6割増しだ)、英国中のECMO 21ベッドの実に91%を占拠してしまった。死亡例も今シーズンすでに27例に達した(うち24例でH1N1確認。残り3例はB型)。

 待機手術の延期を行う地区が出始めたり3)、NHSの電話相談ラインに1分間当たり40回もの着信が殺到したり4)、薬局によってはタミフル在庫がおぼつかなくなったり5)と様々な二次的影響も出始めている。

 問題は感染者数に比べて重症例の割合が高いことだ6)。感染者数自体は人口10万当たり
124で、昨年パンデミックピーク時300には及ばない。にもかかわらず、前述のごとくECMO必要重症例が昨年ピーク時の6割増しなどという数字になっているわけで、これはかなり不気味な事態だ。

 当局も戸惑い気味の模様で、労働党“影の内閣”保健相が「ワクチン啓発キャンペーンの広報予算を(昨年労働党政権時代に比べて)現保守党政権がカットしたためにこの事態を招いたのだ」と突っ込めば、保守党側の現保健相が真っ向から否定するなど、いささかピントのズレた論戦が議会で展開したりしている1)

 今回英国の流行はA/H1N1pdmが主役であることが確認されている。執筆現在、まだ遺伝子情報など公開されていないので3)、スペインインフルエンザ第二波の時のように病原性が高まっているのかそうではないのか、現時点で明らかではない。

 この事態が英国にとどまらずEU全体へ、あるいは北半球全体へ拡がってゆくのか否か、固唾をのんで見守ってゆこう。

■参考情報
1) Sharp rise in serious flu cases prompts jab questions
2) Britain's flu death rate is the highest in Europe
3) Swine flu epidemic fear as hospital admissions soar by 250% in a week
4) 30,000 calls in three days for NHS
5) Relenza and Tamiflu out of stock as demand rockets
6) Alaming Rate of Severe H1N1 Cases In UK

 過去のパンデミック時と今回の大きな違いの1つは、インターネットによる情報提供が力を発揮していることだろう。2003年のSARSの流行時に、北京で日本大使館医務官だった勝田吉彰氏(近畿医療福祉大学)は、「ちぎっては投げ方式でこまめに情報提供をすることで、現地の日本人社会の不安を和らげた」と振り返る。新型インフルエンザが騒がれるようになってからは、このときの経験を元にブログ「新型インフルエンザ・ウォッチング日記」を立ち上げ、日々情報を発信し続けている。最近はツイッター(http://twitter.com/tabibito12)でも情報発信に取り組んでいる。勝田氏に「今、忘れてはならないこと」を綴っていただく(「パンデミックに挑む」編集)。

☆ テーマサイト「パンデミックに挑む」では、最新情報をお届けする「パンデミック・アラートメール」を配信しています。登録はこちらからどうぞ。