透析室でのプラズマクラスターイオン発生装置の利用に、インフルエンザ感染の発症を抑える効果は確認できなかった。シャープの研究委託により財団法人パブリックヘルスリサーチセンターが実施した試験で明らかになった。透析室内を「イオンあり区域」と「イオンなし区域」に区分けし、それぞれの区域で透析を受ける通院患者のインフルエンザ感染の発症件数を見たところ、イオンあり区域群で低い傾向は見られたものの、統計的な有意差には至らなかった。

 試験は、合計観察日数当たりのインフルエンザ感染の発症件数を主要評価項目とした。試験の対象施設数は神奈川県内の44施設で、計3407人の通院患者が透析を受けている。比較方法は、各施設の透析室をイオンありの区域となしの区域に無作為に区分けし、それぞれの区域で透析を受ける患者の間でインフルエンザ感染の発症率を比較した。

 観察期間は2009年12月1日から2010年6月30日までで、この間のインフルエンザ感染の発症件数は、イオンあり群(1154人)で9件、イオンなし群(1274人)で14件だった。主要評価項目は、イオンあり群が0.0000411に対し、イオンなし群が0.0000590だった。イオンあり群に対するイオンなし群のオッズ比は1.7002(95%信頼区間;0.7252-3.9862、p=0.09935)となり、有意差はなかった(コクラン・マンテル・ヘンツェル検定)。なお、並べ替え検定でも、p値は0.1973で有意差はなかった。

 今回の試験は、透析室を二重盲検法によりイオンありとなしの区域に振り分け、そこに通う透析患者の発症件数を評価するという初の試みで、取り組み自体は高く評価されるだろう。ただし先駆的ゆえに、さまざまな専門家らによる評価検証も必要となる。

 たとえば透析室内の区分けは、典型的な設定例では、緩衝区域をはさんで、入り口に近いところと入り口から遠いところを比較する設計となっている。動線に着目すると、入り口近くでは密度が濃く、遠いところでは薄いというバイアスの存在が想定できる。人の密度が高いエリアではインフルエンザの感染リスクも高いと考えられることから、区域設定に課題を残している。中には、1階と2階で区分けした例もあるといい、実際の発症事例が具体的にどの施設のどの区域で、どの時点で確認されたのかを詳細に調べる必要もありそうだ。

 また、患者背景では、女性の割合が、イオンあり群で33.7%(387人)、なし群で39.0%(493人)と有意差が見られた(p=0.01)。主要評価項目への影響はなかったのか、検証が求められる。

 なお、今回の試験の詳細は、監修に当たった東京大学大学院医学系研究科の大橋靖雄氏が、2011年1月21日、22日に開催される日本疫学会で発表する予定だ。