近畿医療福祉大学の勝田吉彰氏

 「秋田県の病院でインフルエンザの集団感染、犠牲者6人発生」のニュースが載った。施設側は10月には早々にワクチン接種を完了し、遅滞なくタミフルによる治療を行っていた。感染者の隔離を実施し、職員は出勤停止措置とった(1)。その後の新聞各紙に大きな記事が続いていないところからみて、「行政やマスコミが叩こうにもホコリも出てこないキチンとした対応」というニュアンスがうかがえる。

 では、この件から何を教訓とすべきなのか。

 実は、3週間ばかり前、米国ミネソタ州の報道の中で、高齢者の犠牲者増が予測されていた(2)。同州の高齢者施設で例年になく異例の早さでインフルエンザの犠牲者2人が発生したことから、今年は(若年者がより多く重症化した昨年と比べて)高齢者が厳しい状況に置かれるかもしれないと警告が発せられていた。その理由として、今年はA香港型(H3N2)の流行が優勢になりそうなことが挙げられている。

 そのH3N2の流行について、今回秋田の集団感染を取上げ米Recombinomicsがコメントを発表している(3)。現在流行しているH3N2(A/Perth/16/2009)の中には、Low reactor typeが認められ、ワクチン接種や過去のH3N2感染により免疫反応が十分ではない可能性があると。だから、たとえワクチン接種を行っていても、今季は高齢者の犠牲者が急増するであろうとしている。

 筆者はこの説にコメントする立場にないし、感染者数も少ない現在、断定的なことを言える人は誰もいないだろう。が、ミネソタ・秋田と、現実の方がそのような高齢者に厳しい結果になってきている。

 このような今、われわれは何をすべきか。

 「高齢者への注意喚起」、これである。

 若年者が多く重症化した昨年のパンデミックインフルエンザ(A/H1N1pdm)のさなか、「1918年ウイルスとの共通性」だの「部分的に免疫をもっている」だのといった話の断片を耳にして「わしらは関係ないんじゃろう」と言いながら、かなり緩んだ行動をとられる中高年以上の方々に数多く接してきた。思い込みほど怖いものはない。

 「昨年がどうあれ、今季は高齢者が危ないのだ。手洗いを、うがいを昨年以上に徹底し、人ごみを避けねばならないのだ。咳エチケットを守らない人に近寄ってはいけないのだ」というメッセージを、折に触れて周囲の高齢者に注意喚起しよう。ヘルパーさんやケアマネさんなど高齢者に接する人々に言ってもらおう。

■参考
(1)インフル院内感染、計86人に 北秋田の鷹巣病院
http://mytown.asahi.com/areanews/akita/TKY201011070232.html
(2)New flu season puts elderly at risk
http://www.startribune.com/lifestyle/health/105177829.html
(3)H3N2 Kills Six In Hospital in Akita Japan
http://www.recombinomics.com/News/11061001/H3N2_Akita.html

 過去のパンデミック時と今回の大きな違いの1つは、インターネットによる情報提供が力を発揮していることだろう。2003年のSARSの流行時に、北京で日本大使館医務官だった勝田吉彰氏(近畿医療福祉大学)は、「ちぎっては投げ方式でこまめに情報提供をすることで、現地の日本人社会の不安を和らげた」と振り返る。新型インフルエンザが騒がれるようになってからは、このときの経験を元にブログ「新型インフルエンザ・ウォッチング日記」を立ち上げ、日々情報を発信し続けている。最近はツイッター(http://twitter.com/tabibito12)でも情報発信に取り組んでいる。勝田氏に「今、忘れてはならないこと」を綴っていただく(「パンデミックに挑む」編集)。

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