8月10日のWHO緊急委員会をうけて、パンデミック終了宣言が出された。フェーズ6はpost pandemic phaseとなり、日本の報道各社も、それなりに報じてくれた。ご同慶の至りである。

 さて、WHOが出した宣言文をひもといてみると、これがなかなか長いのだ。ワード画面にコピー&ペーストして文字カウント押してみたら4015字と出てきた。

 では、報道してくれない部分は一体何を言ってるの? となるが、主だったところを紹介しよう。

* 今回、post-pandemic段階を宣言したが、これはウイルスが消え去ったことを意味するものではない。今後H1N1は季節性インフルエンザ同様の動きをするであろう。局所的な流行はさまざまに起こってゆくであろう。
* 現在の流行国、ニュージーランドやインド当局の警戒・素早い把握と治療・ワクチン勧奨の措置は、他の国のモデルとなりうるべきものである。
* 世界を見渡してみても、感染伝播のパターンはパンデミック当初とは大いに異なっている。北半球でも南半球でも、季節はずれの流行というものはもはや見られない。
* パンデミック当初はH1N1が他の型を押し出して優勢であったが、現在ではこれは当てはまらず、他の型も併存していることが多くの国から報告されて季節性同様のパターンを示している。
* ウイルス自体と同様に、パンデミックの行く末も予測不能(unpredictable)である。これから入るpost-pandemic段階も同様。分からないことは山のようにあるが、はっきり答えられるものはごく一部しかない。引き続き警戒を続けることが極めて重要になり、WHOはサーベイランス・ワクチン・臨床マネジメントを勧告する。
* 幼児など高リスク群とされた群についてはこれから、post-pandemic段階でも同様に高リスクと思われ、(将来症例数の減少が期待されるとしても)当面警戒が必要であろう。
* 少数ながら、若い健康なケースでウイルス性肺炎を起こし重症化することがこれまで報告されてきた。これは季節性インフルではあまり見られないことだが、このパターンが、post-pandemic段階でどう変化するかわからず、特に警戒してゆくべきである。
* 今言えることは、われわれは純粋に幸運に恵まれたというべきである。パンデミック期を通じてウイルスが致死性高いものに変異することはなかった。タミフル耐性が広く拡大することはなかった。ワクチンは流行中ウイルスをうまく適合し、かつ、安全性の高いものであった。

 ここに、強いメッセージが読み取れる。

 今回のパンデミックは、たまたま、幾重もの幸運に恵まれたから現在の被害水準に留まった面があり、「もう終わったのだ!」と浮かれてはいけない。まだ答えられない、分からないことが山積しており、今後、どう状況が変わってゆくのかだれにも分からない。だから、しっかり警戒アンテナをあげてゆかなければならないのだと。

 油断せずにしっかりと胸に刻んでウォッチしてゆこう。

■参考資料
WHOの宣言 H1N1 in post-pandemic period

近畿医療福祉大学の勝田吉彰氏

 過去のパンデミック時と今回の大きな違いの1つは、インターネットによる情報提供が力を発揮していることだろう。2003年のSARSの流行時に、北京で日本大使館医務官だった勝田吉彰氏(近畿医療福祉大学)は、「ちぎっては投げ方式でこまめに情報提供をすることで、現地の日本人社会の不安を和らげた」と振り返る。新型インフルエンザが騒がれるようになってからは、このときの経験を元にブログ「新型インフルエンザ・ウォッチング日記」を立ち上げ、日々情報を発信し続けている。最近はツイッター(http://twitter.com/tabibito12)でも情報発信に取り組んでいる。勝田氏に「今、忘れてはならないこと」を綴っていただく(「パンデミックに挑む」編集)。