ML-flu-DBの管理者を務める西藤小児科こどもの呼吸器・アレルギークリニックの西藤成雄氏

 WHO新型インフルエンザの警戒水準をフェーズ5に引き上げたのは、2009年4月30日。それまで9カ国で150人以上の感染者が確認されていたが、1週間後の5月7日には24カ国・地域に広がり、感染者は2000人以上と急増していた。いつ日本国内で発生してもおかしくない状況の中で、MLインフルエンザ流行前線情報データベースML-flu-DB)の管理者を務める西藤成雄氏(写真)は、全国の300人超の協力医師に対し、「A型インフルエンザの異常な集積」に注意するよう求めた。

 2009年5月7日18時現在でWHOがまとめたところによると、新型インフルエンザの感染者は24カ国・地域に広がり、2371人と急増していた(図1)。メキシコが1112人、米国が896人、カナダが201人となっていた。日本政府が5月5日14時現在、「新型インフルエンザがまん延している国または地域」に指定していたこの3カ国だけで世界全体の93%を占めていた。死亡例はメキシコが42人、米国が2人で、当時はこの2カ国に限られていた。

図1 新型インフルエンザの感染者の推移(WHO発表をもとに作成。2009年)

 日本では水際対策が実施され、新型インフルエンザウイルスの侵入を遅らせる努力が重ねられていた。

 そんな中、ゴールデンウイーク明け以降に国内発生のリスクが高まると予想されたことから、西藤氏は5月5日に「特に重要なお願い」(表1)を配信したのだった。

表1 A型インフルエンザの異常な集積を注意喚起

★ 管理者より 特に重要なお願い ★
現在、季節性のB型のインフルエンザの検出の報告が続いております。しかし、新型インフルエンザの発生により、今後はA型インフルエンザの異常な集積に注意してください。異常なA型の発生に気づかれた場合は、特異な背景があるとして「重症例として登録」でお願いします。

 ML-flu-DBは、アラーム機能が最大の特徴で、全国規模でインフルエンザの異常な検出を把握し、その情報をいち早く関係者で共有できる。2000年冬季にスタートしたこのプロジェクトには、毎年、全国から300人もの医師が参加し実績を積んでいた。

 「特に重要なお願い」は、MLインフルエンザ流行の状況を伝えるメールで伝えられた。その時点で、季節性インフルエンザは一部でB型の報告が続いていたが、今後は新型インフルエンザ(A/H1N1)の発生が予想されており、「A型の異常な集積」が早期発見の指標となるものだった。

 管理者を務める西藤小児科こどもの呼吸器・アレルギークリニックの西藤氏はかねてから、ML-flu-DBが新型インフルエンザ発生の早期発見に貢献できると期待していた。

 振り返ると、当時は海外渡航暦に目が奪われがちだった。にもかかわらず、「A型の異常な集積」に対する注意喚起と、それに呼応した全国300人超の協力医師の意識の高さは賞賛に値するものだ。

 昨年夏、新型インフルエンザの流行をいち早く察知し、全国に向けて警戒を発したのもML-flu-DBだったのだから。