北半球の夏は南半球の冬。南半球のインフルエンザシーズン(と思われている季節)はこれからだ。だから、ちょうど今、南半球は「インフルエンザシーズンに備える季節」ということになる。日本を含めた北半球の次シーズンに、どんなことが起こる(かもしれない)のか、「南半球で起こること」をウォッチしてゆくことは参考になるであろう。

 今回は、そういう視点で「今、南半球で起こっていること」を紹介しよう。

ワクチンが不足

 南米チリでワクチン不足が深刻になっている1)

 チリ政府の接種計画に要する400万ドースに対し、60万ドースしか確保できず問題化している。この国では震災の影響で、約5000ベッドが失われており、予防に力を入れようとした矢先の出来事だけに深刻だ。また、オーストラリアでも同様の生産遅延が報じられている2)

 昨年の流行で、ワクチン各社も各国政府も過剰在庫を抱える結果となった。これが、何らかの心理的重しにならなければと願う。新しい細胞培養法で製造する技術も一部で実用化されてはいるものの、世界中で当たり前のものとして普及するには至っておらず、必ずしも短期間で製造できるわけではない。

 来シーズンのワクチン需給状況がどうなるのか注目して見守ってゆきたい。

オーストラリア・ニュージーランドでワクチン副作用報告相次ぐ

 WHOは南半球向け推奨株として、「A/California/7/2009(H1N1)類似株」「A/Perth/16/2009(H3N2)類似株」「B/Brisbane/60/2008類似株」を推奨している。

 これにもとづき、南半球の国々では今回のH1N1を含めた3価ワクチンの接種が始まっているが、西オーストラリアを中心に、ニュージーランドにも副作用報告が相次いでいる。

 合計225例。その多くは、接種後に発熱・嘔吐・けいれん発作が出現、4月9日には2歳の双子の一方が接種後12時間以内に亡くなるということが起こっている3)

 こうした事態を受け、オーストラリア当局は5歳未満のインフルエンザワクチン接種を中止し、製造元CSL社は出荷停止としている。犠牲者の病理解剖では決め手となる所見がつかめず、ワクチンの特定製造番号(バッジ)との因果関係もなしということで、原因究明は難航しそうな状況にある。

 CSL社の製造過程の問題なのか、それとも新型H1N1を組み合わせ3価ワクチンにしたことにあるのか、原因はいつ究明され、接種再開はいつになるのか。執筆時点では先行き不透明だが、今後の推移から目が離せない。

■参考文献
1)http://www.santiagotimes.cl/index.php?option=com_content&view=article&id=18635
2)http://www.themorningbulletin.com.au/story/2010/04/19/swine-flu-vaccine-delay-concern/
3)http://www.dailytelegraph.com.au/news/national/flu-shot-fatality-toddler-dies-12-hours-after-having-vaccination/story-e6freuzr-1225857872979

近畿医療福祉大学 勝田吉彰氏


 過去のパンデミック時と今回の大きな違いの1つは、インターネットによる情報提供が力を発揮していることだろう。2003年のSARSの流行時に、北京で日本大使館医務官だった勝田吉彰氏(近畿医療福祉大学)は、「ちぎっては投げ方式でこまめに情報提供をすることで、現地の日本人社会の不安を和らげた」と振り返る。新型インフルエンザが騒がれるようになってからは、このときの経験を元にブログ「新型インフルエンザ・ウォッチング日記」を立ち上げ、日々情報を発信し続けている。最近はツイッター(http://twitter.com/tabibito12)でも情報発信に取り組んでいる。勝田氏に「今、忘れてはならないこと」を綴っていただく(「パンデミックに挑む」編集)。