昨年の4月23日は、日本感染症学会が東京で開幕した日だ。印象的だったのは、国立感染症研究所情報センター長の岡部信彦氏の講演。岡部氏は「シベリア鉄道列車内で病死した中国人女性」と「米で報告された豚インフルエンザ」に触れるなど、「新型」への警戒を怠らないよう訴えていた。「メキシコで豚インフルエンザ発生」の一報が世界を駆け巡るのは、その後まもなくのことだった。

 現地時間の2009年4月21日、ロサンゼルスタイムズがカルフォルニア州で9歳の女児と10歳の男児が豚インフルエンザ(swine flu)に感染していたことが分かったと報じた。2人とも回復したと伝えられた。しかし、豚との接触歴が明らかでなく、豚からヒトへの感染経路は不明だった。

 米疾病対策センター(CDC)は2009年4月23日までに、カリフォルニア州サンディエゴとインペリアルで5人、テキサス州サンアントニオ近郊で2人の計7人の患者が確認されたと発表した。いずれも回復に向かっていた。

 この時点で重要だったのは、この7人が感染したウイルスが豚インフルエンザのA/H1N1型だったことだ。しかし、依然として感染経路がナゾだったのが懸念事項だった。

 事態が急変したのは、日本時間の4月23日の夜。カナダからの報道が発端だった。カナダ公衆衛生局によると、メキシコでは、3月半ば以降もインフルエンザ様の流行が続き、メキシコシティで120人の感染例があり、13人が死亡したというものだ。また、サン・ルイス・ポトシでも、14人の感染例があり4人が死亡。ほかに、オアハカで1例、バハ・カリフォルニア・ノルテで2例の死亡例が報告されたという。ただしこの段階では、米国の豚インフルエンザのヒト感染との関連は不明だった。

 翌24日のこと。メキシコのコルドバ保健相は、全米ネットワークに対し自国で発生したインフルエンザ様の大規模集団感染は「豚インフルエンザによるもの」と語った。この時初めて、米とメキシコで発生した2つの「異変」は、豚インフルエンザでつながった。

 新型インフルエンザの発生から1年がたつ。節目ごとに「昨年の今日」を振り返り、日本の新型インフルエンザ対策で何が問題だったのかを見直していきたいと思う。


表1 昨年同時期の「パンデミックに挑む」から

  • 豚インフルエンザのヒト感染、メキシコで少なくとも20人が死亡(4/25)
  • 外務省、豚インフルエンザ感染で渡航者らに注意喚起(4/25)
  • メキシコの豚インフルエンザ、感染疑い例は854人超、死亡は59人(4/25)
  • メキシコの豚インフルエンザ、感染者は1004人、死亡は68人に(4/25)
  • メキシコの豚インフルエンザ、感染疑い1324人、死亡は81人(4/27)
  • 豚インフルエンザ、米国が公衆衛生上の緊急事態を宣言(4/27)
  • メキシコの豚インフルエンザ、感染疑い1614人、死亡は103人に(4/27)
  • 【続報】WHOがフェーズ4を宣言、日本での対策はどう動くのか(4/28)