日本感染症学会の特別シンポジウム

 新型インフルエンザウイルスは、まだ完全にはヒト型に変化していない――。国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長である田代眞人は4月5日、日本感染症学会の特別シンポジウムで講演(写真)。新型インフルエンザウイルスの性状をレビューする中で、完全にヒト型に変化した場合の新型インフルエンザウイルスへの警戒を怠らないよう警告を発した。

 田代氏は、これまでの新型インフルエンザウイルスのウイルス学的解析結果を振り返り、その結果は「疫学および臨床上の知見と良く符合している」と結論した。また、季節性ウイルスとは同じ弱毒型であり、強毒型であるH5N1やスペインインフルエンザとは異なると指摘した。その上で、まだ一部でトリ型ウイルスの性状を保持していると説明。ただし、季節性インフルエンザに比べて、小児では肺炎やアレルギーを誘導する傾向があり、動物実験でも肺炎を起こしやすいことが確認されたとした。

 重症者や死亡者と軽症者の間では、ウイルスの間に違いはないと言及。ウイルス自体の変化は明らかではないことを指摘した。

 幸いな点としては、過去のH1N1ウイルスによる交差免疫記憶が確認できる、ノイラミダーゼ阻害薬に感受性がある、などを挙げた。

 今後については、完全なヒト型ウイルスに変化した場合、ヒト‐ヒト間で感染伝播高率が高くなる可能性があるとの見方を示した。その上で、「過剰対応のみが強調され批判される中、あるいは季節性インフルエンザ程度との間違った安心感が広がり、新型インフルエンザ対策の本質を見失った状況に陥っている」と現状を憂えるコメントも示した。

 流行ウイルスについては、その遺伝子あるいは抗原性、病原性や伝播効率、薬剤耐性などの変化をキャッチするモニター体性の重要性を訴えて、講演を締めくくった。