写真 必死に封じ込め対策に取り組んだスタッフ(発表から)

 WHO進藤奈邦子氏は、「日本は第一波を踏み潰した」と評した。その最前線で国内初の患者らと向かい合ったのは、神戸市立医療センター中央市民病院。病院のスタッフらは、国内発生初期からまん延期までの経験を通して今後に向けた課題抽出を試みた。その1つ「スタッフの精神状態」では、第一波を踏み潰すべく、必死に封じ込め対策に取り組んだスタッフらが「強い疎外感にさいなまされた」ことが浮き彫りになった。

 神戸市立医療センター中央市民病院の荒木三恵子さんと田中真咲さんらが、2月に開催された日本環境感染症学会で報告した。

 同病院は、新型インフルエンザの発生を機に、1種2種感染症指定病院として、神戸市の行動計画に基づき、対策のマニュアルの見直しや発熱外来の設置、病棟での受け入れを進めていた。その矢先、2009年5月16日に、市内で国内感染患者の発生が報告され、未明から感染病棟での受け入れが始まった。

 同日正午に発熱外来を設置。高校生を中心とした患者とその家族が大勢来院し、夕方には感染症病棟が満床となった。

 マニュアルに沿って開設した次の病棟もすぐに満床になり、「想定を超える患者数に、当院はいまだかつてない混乱を極めた」という。

 荒木さんらは、時系列に沿って感染病棟の動きを振り返り、今後につなげるための課題の抽出を試みた(表1)。国内発生早期の対応となった16日、17日とまん延期対応となった18日、そして19日とわずか4日間だけみても、多くの課題が浮かび上がった。

 これらの課題を類型化する中で重要な項目の1つとなったのが、「スタッフの精神状態」だった。(1)モチベーションの維持、(2)患者対応や看護が十分にできないことへのジレンマ、(3)今後も対応しなければならないというストレスーーの3点に集約されたが、特にモチベーションの維持に関連しては、「スタッフが強い疎外感にさいなまされた」ことも課題として浮上した。

 背景には、マンパワー不足からくる「過酷な勤務」があったとも指摘。感染症病棟で対策に追われた看護師の中には、マスクを装着し続けたことから鼻にじょく創ができた人や脱水症状を呈した人、さらには排尿を我慢したために膀胱炎をきたした人もいたという。

 同病院は、今回抽出できた課題を早期に改善し、今後とも起こりうる再興・新興感染症に備える方針だ。こうした課題を多くの医療機関あるいは関係者が共有できてこそ、「次」への力となっていくに違いない。

表1 感染病棟の動きと今後への課題