WHOグローバルインフルエンザプログラム・メディカルオフィサー進藤奈邦子氏

 今回の新型インフルエンザの流行においては、日本特有の現象が指摘されている。第一波がほとんどなかったのもその一つ。WHOグローバルインフルエンザプログラム・メディカルオフィサーの進藤奈邦子氏(写真)は、「日本は第一波を踏み潰した」と指摘し、神戸を中心とした近畿地区で行われた封じ込め対策が功を奏した結果と評価した。2月5日に開催された日本環境感染症学会の講演で言及した。

 進藤氏は、パンデミックインフルエンザ(H1N1)2009の流行パターンの違いに触れる中で、2009年4月末の発生初期から6月上旬までの日本の近畿地方と米国ユタ州のデータを提示し、封じ込め対策の重要性を説いた。

 日本国内で初めての感染患者が発生したのは神戸市で、昨年5月16日のことだった。神戸市は同日、幼稚園、小学校、中学校、高校、特別支援学校について、16日(土)から22日(金)まで休校とする措置をとった。また、修学旅行は延期とし、保育所・高齢者通所介護施設・障害者通所施設などは休所、さらには5月16日と17日に予定されていた神戸まつりも中止とした。

 このほか、(1)不要不急の外出を自粛すること、(2)手洗い・マスクの着用を徹底すること、(3)直接、病院を受診せず、発熱相談センターに相談することについて市民に対し広報したほか、発熱相談センターを24時間対応とするなどの対策をとった。

 神戸市を含む兵庫県全域でも、5月18日(月)から、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学など2352施設で学校休業に踏み切り、大部分の施設では22日まで継続された。

 こうした対策の結果、感染者数は5月に1つのピークを作ったが、それ以降は少数の報告に落ち着いていった。6月4日時点で390人が感染したものの、入院患者はゼロ、死亡もゼロとなった。

 一方の米国ユタ州は、特に封じ込め対策をとらなかった地域の1つだった。流行は、日本と同様の立ち上がりを示していたが、時間とともに漸増していった。その結果、6月4日時点で489人の感染が確認され、うち35人が入院、2人が死亡した。

 進藤氏は、神戸を中心とした近畿地区で行われた封じ込め対策は、その後の流行パターンにも影響したとみる。日本では、インフルエンザ定点当たり届出数に基づいた流行パターンをみると、8月半ばから流行が立ち上がり、11月後半にピークに達した。一方の米国は、医療機関を受診したインフルエンザ様患者の割合に基づいた流行パターンをみると、日本と同様の大きなピークの前に、5月ごろに小さいながらも流行のピークがあった。

 米国の5月ごろのピークを「第一波」と捉えるならば、日本には見当たらないことになる。進藤氏は、この現象を「日本は第一波を踏み潰した」と表現し、地域での封じ込め対策が功を奏した結果とした。