日本感染症学会は1月25日、抗インフルエンザ薬の使用について提言を発表した。点滴静注薬であるペラミビル(商品名;ラピアクタ)が発売されるのを機に、「インフルエンザ患者のリスクに応じた抗インフルエンザ薬の適正な使用」を目指し、指針としてまとめた。

 提言は、「基本的な考え方」「重症度の観点からみたインフルエンザ患者の分類」「抗インフルエンザ薬について」「抗インフルエンザ薬の使用指針」から構成されている。

 「基本的な考え方」では、治療の判断は基礎疾患の有無やその程度に関わらず「患者の重症度そのものが重視されるべき」と指摘。重症度に応じた抗インフルエンザ薬の適応と使い分けが重要と訴えている。

 その上で、「重症度の観点からみたインフルエンザ患者の分類」を提示した(表1)。特徴は、入院管理が必要な患者をA群、外来治療が相当のB群に分け、さらにA群を「重症で生命の危険がある患者」と「生命に危険は迫っていないが入院管理が必要と判断される患者」の2群とした点。参考として、日本呼吸器学会の市中肺炎の重症度および入院についての基準を示している。

表1 重症度の観点からみたインフルエンザ患者の分類

A群.入院管理が必要とされる患者

A-1群:重症で生命の危険がある患者。たとえば、昇圧薬投与や人工呼吸管理等の全身管理が必要な例、肺炎・気道感染による呼吸状態の悪化例、心不全併発例、精神神経症状や意識障害を含むその他の重大な臓器障害例、経口摂取困難や下痢などによる著しい脱水で全身管理が必要な例、などがこれに当たる。

A-2群:生命に危険は迫っていないが入院管理が必要と判断される患者。A-1群には該当しないが医師の判断により入院が必要と考えられる患者、合併症等により重症化するおそれのある患者、などがこれに当たる。

B群.外来治療が相当と判断される患者:上記A群のいずれにも該当しないインフルエンザ患者。

 「抗インフルエンザ薬について」では、現在、臨床の現場で広く使われているタミフル、リレンザのほか、新規発売となったラピアクタ、さらに開発中のラニナミビル(CS-8958)、ファビピラビル(T-705)についても言及している。

 今回の提言の核となる「抗インフルエンザ薬の使用指針」では、上記の重症度ごとに使用法を示した(表2)。たとえば「A-1群:重症で生命の危険がある患者」では、「重症例での治療経験がもっとも多いオセルタミビルの使用を第一に考慮する」とした上で、「経口投与が困難な場合や確実な投与が求められる場合、また、その他の事情により静注治療が適当であると医師が判断した場合にはペラミビルの使用を考慮する」としている。なお、「吸入投与が可能な例ではザナミビルの投与も考慮する」としている。

 また、「B群.外来治療が相当と判断される患者」では、「基本的にオセルタミビルあるいはザナミビルの使用を考慮する」とした。ペラミビルの使用については、「服薬コンプライアンスが憂慮される場合や、その他の事情により静注治療が適当であると医師が判断した場合」に「考慮できる」とした。なお、その際は「300mgの単回投与を基本とする」としている。

 提言では、今シーズン(2009-2010年)の留意事項も示している。内容は、新発売のペラミビル(ラピアクタ)についてで、「当初の供給量は多くを見込めない」ことから「A-1群のうち、経口や吸入での投与が困難な患者、あるいは確実な投与に懸念がある患者にはペラミビルの投与が強く推奨されるため、これらの患者へのペラミビルの供給が滞らないよう十分配慮する」とまとめている。

■参考情報
・日本感染症学会提言「新規薬剤を含めた抗インフルエンザ薬の使用適応について」(日本感染症学会のホームページ

表2 抗インフルエンザ薬の使用指針

A群.入院管理が必要とされる患者
A-1群:重症で生命の危険がある患者
 オセルタミビル(タミフル)
 ペラミビル(ラピアクタ)
 ザナミビル(リレンザ)
 重症例での治療経験がもっとも多いオセルタミビルの使用を第一に考慮するが、経口投与が困難な場合や確実な投与が求められる場合、また、その他の事情により静注治療が適当であると医師が判断した場合にはペラミビルの使用を考慮する。その際、1日1回600mgを投与し、重症度に応じて反復投与を考慮するが、副作用の発現等に十分留意しながら投与することが必要である(3日間以上反復投与した経験は限られている)。なお、吸入投与が可能な例ではザナミビルの投与も考慮する。

【参考】
 ペラミビルに関して、米国では現在、第III相試験に着手したばかりであり、正式な承認申請がなされていない状況にあることから、FDAは重症例への緊急使用(成人では1回600mgを30分以上で点滴静注し、患者状態に応じて5〜10日間投与する)を許可したが、米国での使用経験はまだ少ない。なお、米国におけるペラミビルのこの用法・用量・投与期間は、本邦で承認される用法・用量・投与期間とは異なっている。

A-2群:生命に危険は迫っていないが入院管理が必要と判断される患者
 オセルタミビル(タミフル)
 ペラミビル(ラピアクタ) 
 ザナミビル(リレンザ)

 基本的にオセルタミビルの使用を考慮するが、経静脈補液を行う場合、その他の事情により静注治療が適当であると医師が判断した場合にはペラミビルの使用を考慮する(300mgあるいは600mgの単回投与が基本であるが、重症度に応じて600mgの反復投与を考慮してもよい)。なお、吸入投与が可能な例ではザナミビルの投与も考慮する。また、前述したように、ペラミビルの増量例や反復投与例における安全性は慎重に観察すべきである。

B群.外来治療が相当と判断される患者
 オセルタミビル(タミフル)
 ザナミビル(リレンザ)
 ペラミビル(ラピアクタ)

 基本的にオセルタミビルあるいはザナミビルの使用を考慮する。服薬コンプライアンスが憂慮される場合や、その他の事情により静注治療が適当であると医師が判断した場合にはペラミビルの使用も考慮できる(300mgの単回投与を基本とする)。なお、外来での点滴静注によるペラミビルの投与に際しては患者の滞留時間を考慮し、特に診療所等で有効空間が狭い場合でも、飛沫感染予防策・空気感染予防策など他の患者等へのインフルエンザ感染拡散の防止策を考慮することが必要である。