新型インフルエンザの家族内感染率は8.2%と、季節性インフルエンザの場合に比べて低いことが分かった。佐野市医師会感染症対策委員会の疫学調査で判明したもので、近く学術誌「呼吸」に発表する。

 佐野市医師会は、2008年春から医師会内の感染症対策委員会で新型インフルエンザ対策について議論を重ね、地域での行動目標を具体化し、対策に取り組んできた。新型インフルエンザの発生以降は、佐野市医師会感染症対策委員会を中心に、実態調査にも取り組んできた。今回は、全国的な流行が始まった2009年8月から11月までの結果を中間報告としてまとめた。家族内感染率は、実態調査の1項目として解析したものだ。

佐野厚生総合病院の山口佳寿博氏

 調査を主導してきた佐野厚生総合病院の山口佳寿博氏(写真)によると、新型インフルエンザの家族内感染率は8.2%で、10%以上といわれる季節性インフルエンザの場合に比べて低いことが分かった。調査に協力した開業医(25診療所)からは、調査期間中に3064件の感染者の報告があり、そのうち252人が家族内感染によるものだった。

 その感染経路を見ると、子どもから子どもが47%、子どもから大人が46%と、子どもを起点にしている事例がほとんどだった。大人から大人は4%、大人から子どもは3%と低かった。

重要な感染経路が学校から家族内へシフトか

 実態調査では、時間とともに感染の中心となる年齢層が変化していることも明らかになっている。2009年12月までの調査によると、佐野市における新型インフルエンザの感染者は8月1日から12月31日までに4647人だった。8月が73人、9月が199人、10月が721人と推移、11月に2305人となりピークに達した。12月は1349人に減少している(図1)。山口氏らが着目したのは年齢層、特に学童期の違いで流行カーブが異なっている点だった。

図1 佐野市における新型インフルエンザの推移(2009年8月1日から12月31日)

 たとえば、小学生と高校生は11月にピークがあったが、中学生は10月からピークに達していた(図2)。一方、就学前の幼児と19歳以上の成人では、やはり11月にピークがあったものの、12月の減少幅は、小中高生に比べると少ないという結果だった(図3)。

図2 感染者の年齢分布の推移(小中高生)

図3 感染者の年齢分布の推移(就学前の幼児と19歳以上の成人)

 これらの結果を踏まえ委員会としては、以下のように考察している。佐野市(10万人都市)の場合は、8月以降、成人に加え、高校生、中学生など比較的高年齢の学徒間で感染が蔓延しはじめ、9月には小学生をはじめとする低年齢層へ感染主体が移行した。10月には中学生の間で感染が広がる一方、高校生は学年や学級閉鎖などの対応によって抑制された。また、11月に入ってからは中学生で感染者数が横ばいとなったが、これは学年や学級閉鎖などの効果と考えられた。

 就学前の幼児や成人の感染者数が徐々に増加している点については、「11月には中高生の感染者数を上回っており、12月もこの傾向が続いている。これは、学校よりも家族内の方が重要な感染経路になりつつあることを示唆している」(山口氏)との見方だ。

 その上で山口氏は、「今後、家族内感染率が上昇し、インフルエンザで重症化リスクが高い幼児や高齢者に感染がさらに波及していく可能性も考えておかなければならない」と警告している。