日本小児科学会新型インフルエンザ対策室の森島恒雄氏(岡山大学大学院小児医科学教授)

 11月に入り、新型インフルエンザ感染者の死亡例で5歳以下の乳幼児の割合が急増している。感染者の低年齢化も顕著になっており、今後さらに乳幼児の重症例が増加することが危惧される状況となっている。日本小児科学会新型インフルエンザ対策室森島恒雄氏(岡山大学大学院小児医科学教授、写真)は、今後の治療戦略として、夜間時間外診療体制の負荷軽減が必須であるとし、中でも小児科医の疲弊を救うための方策とトリアージ機能の維持が緊急の課題と訴えた。11月15日に開かれた日本小児感染症学会の緊急シンポジウムで発表した。

 日本小児科学会新型インフルエンザ対策室が11月13日時点でまとめた最近の動向によると、11月に入ってから5歳以下の乳幼児の死亡例が目立ってきた。死亡例全体に占める5歳以下の症例は、10月31日までは9.5%(42例中4例)だったが、11月1日以降は39%(18例中7例)と跳ね上がった(図1)。

図1 新型インフルエンザ感染者の死亡例に占める乳幼児の割合(日本小児科学会新型インフルエンザ対策室)

 特徴的なのは、「発症から死亡まで非常に短期間である症例が多い点」で、急死例や自宅での死亡が確認された例、急激な経過をたどる重症肺炎、多臓器不全などの症例が報告されている。

 日本小児科学会は、緊急の対策を訴えるとともに、基礎疾患を有する小児に加えて健康な小児への予防接種も可能な限り急ぐべきとする見解も表明している。

 森島氏は講演で、こうした現状を報告するとともに、今後の治療戦略として、夜間時間外診療体制の負荷軽減、救急搬送システムの構築、他診療分野との連携の3点を提示した。特に、夜間時間外診療体制の負荷軽減では、休日夜間診療所で2時間待ちの間にチアノーゼが出現した事例が報告されていることを紹介。「こうした事態を繰り返さないためにも、夜間時間外診療の支援が急がれる」などと指摘した。特に、小児科医の疲弊を救うための方策とトリアージ機能の維持が緊急の課題とも訴えた。

 医療体制については、岡山方式を紹介。岡山県では各病院が協力し、岡山大学、倉敷中央病院、岡山医療センター、川崎医大病院、その他の病院が連携して、小児の重症度に応じて対応する仕組みを構築している。岡山県では、例年5〜10例の重症例が確認されているが、新型インフルエンザでは約5倍の患者数増加を見込み、25〜50例の重症例の発生を想定して、最大で10台の人工呼吸器を稼動できる体制を組んでいる。こうした医療体制がうまく稼動する上でも、森島氏が指摘した3点は、今後の治療戦略として欠かせないものとなる。

 なお、発症から死亡まで非常に短期間である症例が多いことから、日本小児科学会新型インフルエンザ対策室は、症状が急速に悪化する症例にどう対応するかについて、救命救急の立場から静岡こども病院小児集中治療センターの植田育也氏による解説を公表している。詳しくは、「新型インフルエンザ 最近の動向から」(11月13日新型インフルエンザ対策室第6報)に掲載されている。


■参考
PICU の観点から見た救命救急診療戦略(静岡こども病院小児集中治療センターの植田育也氏)
日本小児科学会;新型インフルエンザ