日本臨床内科医学会で報告する廣津氏

 川崎市では10月に入り、新型インフルエンザの感染者が急増。これに伴い、呼吸器障害を示す症例も目立ってきた。これまで150例以上の患者を診た廣津医院廣津伸夫氏(写真)は、相次いだ呼吸器障害を呈した症例の経験から、特に呼吸状態に注意を払う必要性を訴える。具体的には、重症患者を鑑別するために「1分間の呼吸数を測定する」ことや、重症度を把握するための「新型インフルエンザ患者チェックリスト」などの活用も提案する。10月11、12日に埼玉県大宮ソニックシティで開催された日本臨床内科医学会で報告した。

 川崎市では、新型インフルエンザの罹患率が10月に入り1.04%に増加した。9月7日時点で0.33%であり、この1カ月で3倍以上に拡大したことになる。廣津医院でも、9月は多い日で1日に4人程度だったものが、10月に入ってからは5人以上の日が珍しくなくなり、10月5日の週は15人以上となる日も出ている。

 患者背景としては、7〜12歳が44.4%、13〜18歳が33.3%で、小学校、中学校、高校の世代で全体の80%近くになっている点が最大の特徴だ。この傾向は、川崎市全体と変わらないという。

 廣津氏によると、過去の調査では、季節型インフルエンザでの学校内感染の増加率は1週間で全校生徒の4%程度だった(図1の小03〜小05)。これに対し、今回、新型インフルエンザの学校内感染を調査したところ、1週間の増加率は8%以上と高かった(図1の小09)。「新型インフルエンザの流行において、学校内感染が大きなウエイトを占めているためと思われる」(廣津氏)。

図1 全校生徒に対する罹患率の推移からみた季節性インフルエンザと新型インフルエンザの易感染性の比較(廣津氏による)

 これまでに診た症例から廣津氏は、「発症日前に、咳・鼻汁を認めることが多い」「症状は多彩で、軽症例も見られる」「若年者では胃腸障害を伴うことが多い」などの特徴が浮かび上がったと指摘した(表1)。

表1 新型インフルエンザの特徴(廣津氏による)

■ 発症日前に、咳・鼻汁を認めることが多い
■ 発熱なく、鼻水だけで、迅速診断検査で陽性の場合がある
■ 潜伏期が長い
■ 初期の顆粒球増加・CRP上昇は軽度である
■ 症状は多彩で、軽症例も見られる(ウイルスの増殖は穏やかだが、肺での増殖が同時進行している可能性がある。いったん発症すると呼吸器障害の進行は早い)
■ 若年者では胃腸障害を伴うことが多い

 廣津氏はこれらの臨床的な特徴を踏まえ、「早期診断・早期治療」「呼吸状態に注意」「呼吸数・SpO2の観察」「酸素吸入装置の設置」「脱水に対する処置」などの対策が必要と強調した。

 一つの工夫として廣津氏は、新潟大の鈴木宏氏が考案した「新型インフルエンザ患者チェックリスト」を自院用に改変し活用しているものを提示した(表1)。第一線の医療現場では、重症度の鑑別が必要となっていることから、リストには「重症度」を尋ねる項目も盛り込んでいる。呼吸数を確認しているのは、「重症患者の簡易鑑別法として1分間の呼吸数は重要」(廣津氏)との判断からだ。6歳以上では30回以上、1〜5歳では40回以上、2〜12カ月では50回以上であれば、それぞれ重症と判断する目安となる(表2)。

表1 新型インフルエンザ患者チェックリスト(廣津氏による)

表2 重症患者の簡易鑑別法(廣津氏による)

 廣津氏は、患者増に伴い呼吸器障害を呈する症例も目立つようになっているという。こうしたチェックリストなどを活用して、効率的に重症例を拾い上げることが求められている。もちろん、重症者を受け入れる医療機関との連携も欠かせない。