九州保健福祉大学教授の佐藤圭創氏

 新型インフルエンザの対策は、感染拡大防止から重症化防止に転じた。いかにして効率的なトリアージを行い、重症例の早期治療に入るかが、大きな課題となっている。解決へ向けた取り組みが広がる中、重症例の治療面でも新たな動きが出てきた。九州保健福祉大学教授の佐藤圭創氏(写真)は、「重症例の治療では、マクロライド療法も選択肢に入れるべき」と訴えている。

 臨床の現場では、「少量のマクロライドを長期投与している人は、かぜやインフルエンザに罹ってもひどくならない」という事例を経験することが少なくない。佐藤氏らは、早くからマクロライドの抗炎症作用に着目、人のインフルエンザにおいてもマクロライドの有効性を解明してきた。

 これまでに、マウスを使ったインフルエンザ肺炎モデルを用いて、マクロライドがインフルエンザによる炎症を制御することを明らかにしている。

 また、人でも、マクロライドの1つであるクラリスロマイシンを少量投与(200mg1日1回)した慢性気道感染症の患者において、少量投与をしなかった患者群よりも、フリーラジカル生成系の誘導に働くIFN-γ濃度が有意に低下したことを確認している(日本胸部臨床、2008;676:606)。

 佐藤氏は、人でもマウスの系と同様の結果が得られたとし、「マクロライドがフリーラジカル生成系を抑制して治療効果を発現する可能性が示唆された」と結論付けている。

 こられの系は、インフルエンザに感染する前からマクロライドを少量投与する効果を解明したもの。現在、インフルエンザの感染が判明してから投与(200mg1日1回)した場合の系でも、マクロライドの有効性を解明中だ。

 これまで明らかになったデータによると、タミフルあるいはリレンザのみ(n=12)とタミフルあるいはリレンザ+クラリスロマイシン(n=12)の2群で、抗炎症作用を比較したところ、IFN-γ濃度、血清中のxanthine oxidase活性、血清中NO濃度において、抗インフルエンザ薬とクラリスロマイシンの併用群で有意に値が低下していたという(図1、2、3)。

図1 治療3日目のIFN-γ濃度の変化(佐藤氏による)

図2 血清中xanthine oxidase活性に対するクラリスロマイシンの効果(佐藤氏による)

図3 血清中NO濃度に対するクラリスロマイシンの効果(佐藤氏による)

 佐藤氏は、インフルエンザの病態は(1)インフルエンザウイルスそのものによるもの、(2) 2次感染によるもの、(3)過剰な免疫反応によるもの、の3つ因子から形成されていると解説する。その上で、マクロライドは、「過剰な免疫反応による病態」をターゲットとした治療戦略の1つとなりうると見定めている。

 新型インフルエンザの重篤化の原因としては、サイトカインストーム(サイトカインの過剰産生)が注視されている。宿主側の異常な過剰反応により病態が急激に悪化していくわけだが、マクロライド療法はこの過剰反応を抑えることで重篤化を防げる可能性があるわけだ。

 佐藤氏は、インフルエンザの感染が確認されてからもマクロライド療法(抗インフルエンザ薬との併用療法)の有効性が確認されつつあるとし、「新型インフルエンザの重症例の治療では、マクロライド療法も選択肢に加えるべき」と話している。