新型インフルエンザ重症例、特に死亡例では、発症初期に「簡易検査でA型陰性」だった事例が目立っており、専門家からは「診断を簡易型検査に頼ることの危険性」を指摘する声が挙がっている。早期治療の躊躇が取り返しのつかないことになりはしないか、危惧されるところだ。

 これまで確認された新型インフルエンザ感染者の死亡例の経緯をみると、発症初期に「簡易検査でA型陰性」だった事例が5例ほど確認できた。

 1例目の50代男性(心筋梗塞の既往、慢性腎不全で透析)の場合、8月9日に咽頭通や咳の症状があり、10日に受診したが、その時点で37℃台で、簡易検査ではA型陰性だった。12日に簡易検査でA型陽性となり、タミフルによる治療を受けていた。

 2例目の70代男性(肺気腫、糖尿病、高血圧の基礎疾患。糖尿病による腎不全で週に3日、腎透析)の場合は、8月16日に38℃の発熱、倦怠感、軽い咳、息苦しさがあった。17日午前に市内の医療機関を受診した際、迅速診断キットの結果はA型陰性だった。そこでは「肺炎疑い」と診断されたが、状態不良のため、精査目的で市内の病院を紹介された。

 その後、同日午後に、紹介先の病院へ入院。急性気管支炎による肺気腫の悪化と診断された。発熱、呼吸困難、全身倦怠感の症状があり、再度、迅速診断キットを実施したところ、A型陽性となったため、タミフルを投与し、抗生剤を点滴された。

 4例目の新型インフルエンザ疑い例(70代女性)の場合は、8月24日に38.5℃の発熱。しかし、簡易検査ではA型もB型も陰性だった。この時点で胸部X線検査を実施したが、肺炎の所見はなかった。25日に呼吸困難、40.4℃の発熱があり、この段階で簡易検査でA型陽性となった。酸素吸入に入るが同日午前10時23分に死亡した。

 5例目の30代男性(慢性心不全 糖尿病 気管支喘息 アトピー性皮膚炎)の場合は、8月20日に咳、水様性下痢、食欲低下があった。8月23日に発熱(37.9℃)があり、市内医療機関受診。症状が改善しなかったため、25日に自宅近くのかかりつけの医療機関を受診。市内医療機関を紹介され、再度、同医療機関を受診したところ、慢性心不全と肺炎のため入院となった。この時点で、インフルエンザ迅速簡易検査ではA型陰性だった。

 26日朝に状態が悪化したため、人工呼吸器を装着しICUで治療が開始された。この時点でも、インフルエンザ迅速簡易検査ではA型陰性だった。

 6例目の60代女性(消化器がん術後)の場合も、27日に発熱(38℃)、咽頭痛、咳、鼻汁があった。28日に近医を受診、そこでは迅速診断でA型もB型も「陰性」だった。入院し人工呼吸器の装着となったが、29日未明に死亡した。なお、28日にPCR検査により、新型インフルエンザ陽性を確認している。

 このほか死亡には至っていない重症例においても、たとえば沖縄県で確認された重症化例の中には、病初期における簡易キット検査でA型陰性と判定され、その後の検査でA型陽性に転じた例が報告されている。このため、沖縄県は重症例の発生に伴い、医療機関に対して、インフルエンザ症状のある患者で新型インフルエンザが疑われる場合は、簡易検査の結果にかかわらず、抗インフルエンザ薬による治療を検討するよう求めた。また、状況によっては再検査の必要性についても留意するよう求めていもいる。

 日本臨床内科医会のインフルエンザ研究班のメンバーである原土井病院臨床研究部部長の池松秀之氏は、特にハイリスク群と言われる人では、「発症初期にインフルエンザ診断を簡易検査に頼るのは危険だ」とし、「症状優先」で取り組むべきと指摘している。