季節性インフルエンザのAソ連型において、H274Y変異が見つかったタミフル耐性ウイルスの感染者では、タミフルによる治療を行った場合、体温低下の有意な遅延を認めることが報告された。日本臨床内科医会インフルエンザ研究班の研究成果の一環で、7月21日、Journal of Infectionの電子版に掲載された。

 研究班は、H274Y変異が検出されたAソ連型タミフル耐性ウイルスの感染者において、タミフル治療が有効なのかどうかを明らかにするため、2007/2008シーズンと2008/2009シーズンの2シーズンの73例について検討した。

 73例のうち、2007/2008シーズンのAソ連型44例(非変異群)では、H274Y変異が検出された症例はゼロだった。一方、2008/2009シーズンのAソ連型29例(変異群)では、すべての症例でH274Y変異が検出された。

 73例はすべて、発症48時間以内にタミフル投与が開始されていた。このため研究班は、2群間の臨床経過を比較することで、H274Y変異が及ぼすタミフル治療への影響を明らかにした。

 両群間の患者背景は、年齢、性別、ワクチン接種、治療開始前の体温などの各項目で有意な差は認めなかった。まず、タミフル投与前と投与後4〜6日目にウイルス分離を行い、感受性試験(IC50)を行ったところ、非変異群では投与前IC50が1.5±0.8nM、投与後IC50が2.1±0.7nMであったのに対し、変異群では投与前IC50が319±185.4nM、投与後IC50が198±172.5nMだった。変異群の方が投与前後ともに、IC50が有意に高いという結果だった。つまり、タミフルの感受性は、変異群では200分の1に低下していたことになる。

 またウイルスの残存率は、2群間で全年齢では有意差がなかった。ただし、15歳以下と15歳超で比較すると、変異群において15歳以下の方が有意に残存率が高いという結果が得られた(p=0.038)。

 このため15歳を境に臨床上の違いを見たところ、15歳以下では、変異群で3、4日目に非変異群に比べ有意に体温が高く、体温低下の遅延を認めた(図1)。なお、15歳超でも、15歳以下ほど顕著ではないものの3日目に有意に体温が高かった。

図1 変異群において15歳以下では体温低下の遅延を認める(参考文献1より)

先週末に都内で開かれたセミナーで成果を報告した河合氏

 これらの結果から、「文献的には投与後の血中濃度がIC50で500〜1000nMとの報告があり、変異群の投与前の300nMより高く、感受性が200分の1に低下していても、ハイリスクではない人ではある程度は有効であると考えられる」(研究班長の河合直樹氏、写真)としている。ただし、変異群において、感受性の低下は15歳以下と15歳超で差がなかったものの、15歳以下ではウイルス残存率が高く、体温の低下の遅延も認めたことから、注意を要すると警告している。

■参考文献
1)Clinical effectiveness of oseltamivir for influenza A(H1N1) virus with H274Y neuraminidase mutation

■訂正
 7月30日に以下を訂正しました。
・図1の15歳超の凡例が間違っていました。修正したものを掲載しました。