新潟大学大学院国際感染症医学講座公衆衛生学分野教授の鈴木宏氏

 今後の新型インフルエンザ対策では重症度に応じた対応を核とすべきだーー。新潟大学大学院国際感染症医学講座公衆衛生学分野教授の鈴木宏氏(写真)は、先週末に都内で開かれたセミナーで持論を展開した。呼吸数や経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)を指標とし、患者を軽症、中等症、重症の3段階に振り分けて対応するというのが基本。診療体制の面では、軽症外来、重症外来を設置し、トリアージを効率化することで重症化例への対応を確実にしようとするものだ。

 「手遅れをなくすことが、今後の新型インフルエンザ対策でもっとも重要なことだ」。鈴木氏の言葉に力がこもる。「手遅れをなくす」の言葉には、感染が拡大し重症化例が出てくることが危惧されている中、圧倒的な数の軽症例の中に紛れ込みがちな重症例をいかにして拾い上げ、的確に対処するかという問題意識がある。

 答えは重症度に応じた対策を講じること。そのために鈴木氏は、患者や家族も使えるチェックリスト(表1)を提案している。「患者や家族自身が記入して外来に持参すれば、患者のトリアージに貢献しうる」。着目すべきは、体温だけでなく呼吸数も取り上げた点だ。新型インフルエンザ様の患者の重症度を判定する簡易鑑別法が「1分間の呼吸数」なのだという。5歳以上であれば1分間に30回以上、1〜4歳であれば40回以上、2〜12カ月では50回以上がそれぞれ重症と判断できる。

表1 患者や家族も使えるチェックリスト

 チェックリストの結果、「重症」でなかった患者は、「新型インフルエンザ軽症外来」を受診するよう呼びかける。また、重症であれば「新型インフルエンザ重症外来」への受診を誘導するわけだ。この段階で、患者はおおまかに「軽症」と「重症」の2群に振り分けられる。

 鈴木氏は、「新型インフルエンザ軽症外来」は診療所や一般病院への設置を想定している。そこでは、抗インフルエンザ薬の投与を行った上で、自宅での療養とし、フォローアップを行うことになる。

 一方の「新型インフルエンザ重症外来」は、スペイン・インフルエンザ相当の致死率>1.0%以上の高度病原性型の場合には、流行早期に既存入院施設では病床が不足する事態が考えられるため学校などに設置する特別外来(病室も設置)で対応する。今回の新型では、0.5%〜1.0%の中等度病原型であれば既存入院施設に設置する特別外来など、各都道府県が個々に想定する場所に設置する。

 その上で、チェックリストで「重症」と判断された患者をさらに「中等症患者」と「重症患者」に振り分けていく。ここで重要となる指標がSpO2だ。SpO2が92〜95%であることに加え、全身状態を視診する。その結果、人工呼吸器による酸素吸入の措置が必要ないと判断されれば、中等症に振り分けられる。中等症の患者は、入院加療となり、抗インフルエンザ薬の投与、酸素吸入、補液を行う。

 SpO2が90%未満であることに加え、全身状態を視診し人工呼吸器による酸素吸入などの措置が必要と判断されれば、重症に振り分けられる。重症患者は、入院加療となり、抗インフルエンザ薬の投与、人工呼吸器使用も含む酸素吸入、補液などの治療を受ける。「新型インフルエンザ重症外来」では対処できない場合は、重症例に対応できる病院に転送することになる(図1)。

 重症度に応じた医療体制という視点は、十分に検討されてしかるべきではないだろうか。

図1 重症度に応じた対応(鈴木氏のプラン案)