「発熱などの症状があればすぐに受診するように伝えた」「過度な心配をしないよう説明した」「血糖値コントロール不良の場合、感染リスクが増大し重症化リスクを高めるので、糖尿病治療をきちんと守ることを指導した」−−。新型インフルエンザにおいてもハイリスク群である糖尿病患者に対して、診療の現場では様々な取り組みが進んでいることが分かった。日経メディカル オンラインが6月に実施した「2型糖尿病の薬物治療に関する調査2009」に寄せられた意見の中から、医療現場での工夫や具体的な対策を紹介する。

 患者への説明や指導では、「コントロール不良の場合は(新型への感染に対して)厳重に注意するよう指導した」「血糖コントロール不良の患者さんの生活習慣等の改善を促した」との回答がある一方、「コントロールが良好な場合は必ずしもハイリスクではないため、過度な心配をしないよう求めた」とする意見もあった。個々の患者の管理状態に応じた対応が進んでいることが垣間見えた。具体的な感染予防については、「手洗い、マスク、うがいの励行」をあげた医師が多かった。

◆患者への説明
・合併症の進行が軽度でコントロールが良好な場合は必ずしもハイリスクではないため、過度な心配をしないよう(パニックにならないよう)説明した
・マスク、手洗いをすすめるポスターを貼り、患者に説明
・院内にインフルエンザの予防のポスターを貼った
・コントロールが大切と改めて話した
・玄関に、海外からの帰国者あるいは新型インフルエンザ罹患者と接触のあった人は発熱外来に連絡するよう求めるなどの掲示をした
・インフルエンザにかかる可能性を普段から意識するよう掲示などで伝えた
・必要以上に不安にならないよう精神的サポートを行った
・冊子を配った
・老人ホームなどへの連絡した。小学校、学校保健委員会で、教員、PTAの一部にレクチャーをした
・パンフレットやポスターで、予防の啓発に努めた
・コントロールの良好な糖尿病患者には、油断はしてはいけないが恐れることはないと不安を解消するように話した
・発熱した場合、来院前に電話連絡することを周知した
・新型インフルエンザについてのパンフレットを作成し、患者に配布した
・普段から十分なインフルエンザの予防対策の必要性を書いた紙を渡した
・患者の問い合わせに対して回答している
◆患者への指導
・手洗い、マスク、うがいの励行
・コントロールの悪い患者に特に重点的に話している。薬を余分に持つように指導している
・コントロール不良の場合は厳重に注意
・うがい、手洗いの励行
・人ごみ内でのマスクの励行
・発熱患者と接触させないようにした
・発熱を訴える患者は事前に電話連絡を行うよう指導。受付時に全員、発熱を有無を再確認
・普段から糖尿病が悪くなると病気に罹りやすい、治りにくいと指導している。あまり言うと脅しのようになるので程々にしている
・血糖コントロール不良の患者さんの生活習慣等の改善を促した
・食事、運動療法を細かく指導
・患者さんに手洗い、うがいをするよう指導するとともに、規則正しい生活・食生活を取るように指導した
・マスク等の予防を指示
・普段から感染に対する抵抗力が弱まっていることを再指導
・毎日、朝夕、外出時は帰宅後にしっかりうがいをする。人混みの場所ではマスクをする
・血糖値コントロール不良は、感染リスクの増大、重症化リスクを高めるので、糖尿病治療をきちんと守ること。発熱など、体調に異常があれば、すぐ受診するように指導

 医療施設としての対応では、マスクや消毒薬の設置を進める施設が目立った。マスクについては、購入がままならなかった経験から「秋に向かって一括購入準備を進めている」との回答もあった。

 院内に向けては、「病院職員対象に、糖尿病患者が新型インフルエンザ罹患後重症化のハイリスクであることを周知徹底した」という施設もあった。施設全体としての情報共有が大切であることを教えている。また、「発熱、感染確認時の対応マニュアルを作成した」「インフルエンザ疑いの患者の診察体制を整えた」「まん延期の出勤体制の整備のほか、クリニックの対応マニュアルを作成し感染防止についての話し合いを持った」という回答もあり、施設によっては具体的な取り組みが進んでいることをうかがわせている。

◆マスク、消毒薬
・手指用の消毒薬を設置
・マスクは、春に購入できなかったので、秋に向かって一括購入準備を進めている
・マスクの設置
・マスクの備蓄
・病院の入り口や、診察室の入り口に手指消毒を設置
◆施設としての対応
・感染拡大状況が不明な時期に来院した患者に対しては、長期内服処方とした(結果的に長期処方は今回は必要ではなかった)
・地域連携を強化し、確認した
・病院職員対象に勉強会を開き、糖尿病患者が新型インフルエンザ罹患後重症化のハイリスクであることを周知徹底した
・職員、患者双方へ、手洗い、うがい、マスクの徹底。発熱、感染確認時の対応マニュアルを作成した(感染委員会にて)
・病院でマニュアルを作成した
・職員の咳エチケットの重視
・病院内の体制を再確認した
・インフルエンザ疑いの患者の診察体制を整えた
・まん延期の出勤体制の整備のほか、クリニックの対応マニュアルを作成し感染防止についての話し合いを持った
・外来受付や待合室にコールセンターの電話番号等の張り紙をした

 ハード面では、「発熱者専用のブース設置」「屋外に,発熱外来専門とする場所を設けた」「テントなどを利用した外来の設置を検討中」など、糖尿病にかかわらず外来トリアージ体制を強化する施設も少なくない。

◆外来
・特別に外来を設置した
・発熱者専用のブース設置
・発熱患者の隔離方法などにつき対処
・発熱外来を設置
・屋外に,発熱外来専門とする場所を設けた
・テントなどを利用した外来の設置を検討中
・インフルエンザ様患者と糖尿病を含む慢性疾患患者の待合室を分離した
・糖尿病にかかわらず、発熱患者は別室で診療した
・外来トリアージ体制の強化

 抗インフルエンザ薬については、「確保した」「備蓄した」とする施設が目立った。一方、ワクチンについては、「ワクチンの確保が難しくなると感じた(たぶん、取り合いになる)」と、医療現場での不安を訴える回答もあった。このほか、除湿器や空気清浄機の追加購入を挙げる施設もあった。

◆薬、ワクチンなど
・抗インフエンザ薬の確保をした
・ワクチンの確保が難しくなると感じた(たぶん、取り合いになる)
・インフルエンザが発症したときにはすぐ対応ができるようにタミフルを確保している
・ワクチンの確保を検討
・タミフルのほか、同等の効果があると思われる漢方薬麻黄湯の確保を行った
・マスク、消毒薬、タミフル、リレンザの備蓄。および空気清浄機の購入
・抗インフルエンザ薬と検査キットの確保
・除湿器、 空気清浄機の追加購入

 調査は、日経メディカル オンラインに登録している医師会員にアンケートサイトを告知し、webサイトを通じて回答を得た。調査回答数は523人(糖尿病・内分泌代謝内科12.8%、消化器内科14.3%、循環器内科19.3%、その他科目53.6%)。調査期間は2009年6月9日から6月22日。