発熱外来での利用を想定しているクリーンブース「バリフロー」(陽圧型)

 高砂熱学工業(東京)は6月15日、気流で感染防御を実現した医療用クリーンブース「バリフロー」(写真)を7月から本格的に販売すると発表した。国立病院機構仙台医療センターと共同開発したもので、新型インフルエンザ対策の発熱外来での活用を想定している。当初販売目標は500台としているが、すでに大学病院や地域の中核病院から40件以上の導入希望があるという。

 クリーンブース「バリフロー」(陽圧型)では、模式図(図1)にあるように、医師は、背後から気流(初期風量26/32m3/分)が流れる診察ブースで診療にあたる。

 気流は、医師と患者との間に垂れ下げた透明なカーテンによって整流され、ちょうど医師の頭部から顔、胸、腹部へと小さな滝のように流れる。このため、患者がくしゃみや咳をしても、そのしぶきはまず、医師との間にあるカーテンでさえぎられるほか、さらに「気流の滝」によっても医師への接近が妨げられる。なおカーテンは、クリアな視野を確保し診察が普通にできるように工夫した。

図1 クリーンブース「バリフロー」の模式図(陽圧型)

 カーテンと気流の滝という二重の壁で「瞬時感染」の遮断に成功したわけで、「このブースを使えば、防護具フル装備による窮屈な診療は避けられる」(開発に携わった仙台医療センターウイルスセンター長の西村秀一氏)と期待される。

 高砂熱学工業の設計課担当課長の阪田総一郎氏は、「診察空間をブース化することで、清浄空気域を確保することが可能になった。また、HEPAフィルタによる高速循環ろ過が行われるので診察室全体の清浄化も実現、他の医療関係者の感染リスクを低減することも可能になった」などと特徴を挙げている。

 また、患者との間にあるカーテンは簡単にたくし上げることができ、気流の乱れを最小限に抑えた上で、インフルエンザ診断キットによる検体採取や聴診器の使用など、様々な診療行為も可能とした。

クリーンブース「バリフロー」(陽圧・陰圧兼用型)

 「バリフロー」には陽圧・陰圧兼用型(写真、模式図、図2)もあり、比較的患者数が少ない新型インフルエンザの発生初期あるいは日常での結核患者の診察など、多面的な診察での使用を想定している。なお、新型インフルエンザの患者が搬送される可能性がある救急医療の現場からの指摘を受け、側面にはさまざまな処置をするための「取り外し可能な窓」を設置してもいる。

 西村氏は会見で、「発熱外来というと個人防護具を身にまとった“フル装備”での診察を想起させるが、頭の先からつま先までの全身を包まれたような状態を強いられるのは、長時間の診療を考えると医師の立場からみるとあまりにも過酷」と指摘。特に「地域医療の最前線にある開業医の先生方に、発熱外来への理解が広がらない原因の1つとなっている」との認識も示した。こうした問題意識から、個人防護具と同レベルの「安全と安心」を実現しつつ、日常の診察装備レベルで発熱外来にあたれる装置の開発に取り組んできたという。

図2 クリーンブース「バリフロー」の模式図(陽圧・陰圧兼用型)。新型インフルエンザの発生初期あるいは日常での結核患者の診察など、多面的な診察での使用を想定

 当初は温度と湿度の制御で、診察室ごと感染フリーにすることも検討した。しかし、それはある程度の時間、空気中を浮遊するウイルス粒子を吸い込むことによる感染に対しては有効であっても、くしゃみや咳と一緒に口元から勢い良く出すエアロゾルを介した瞬時の感染には役立たないと考えられた。これは主に、患者が必ずマスクをはずすことになる「検体採取」の際に深刻な問題となる。

 こうした「瞬時感染」(西村氏)を防ぐために検討したのが、気流による制御。生命工学などの実験室では、環境微生物の混入(コンタミネーション)を避けながら作業を行うための装置としてクリーンベンチが使われている。いっそのこと診察ブースをまるごとクリーンベンチ化して、その中に医師が入って診察すればどうかという発想だったのだ。

 基本仕様は、電源が単相100V(50/60Hz、295/455w)、初期風量が26/32m3/分、サイズが幅1080mm、奥行き1461mm、高さ1940mm(保管時:幅1080mm、奥行き660mm、高さ1970mm)、重量約107kg、騒音60dB(A、50Hz運転時)など。定価は、陽圧型が100万円、陽圧・陰圧兼用型が115万円(いずれも税抜き)。