佐賀大医学部附属病院の救命救急センターの井本佳織氏(右)と前田悠子氏(左)

 医療従事者で、国内初の新型インフルエンザ感染が確認されたのは5月22日。大阪府の発表によると、感染が確認されたのは、大阪府池田市に在住し、箕面市立病院(大阪府箕面市)に勤務している29歳の男性看護師だった。5月20日夜から発熱があり、21日朝に簡易検査でA型インフルエンザウイルスの陽性反応が出たため、PCR検査を実施した。21日夜に感染が確定したが、同病院は「院内感染ではなく、休日中に感染した」との見解を表明した。これが院内感染だったら、何を考えなければならなかったのか。その1つに、マスクの選び方が浮上する。あなたのマスクは本当に大丈夫なのか−−。

 これまの取材では、残念ながらマスクの種類によっては、使い方の指導後であっても漏れ率が大きいマスクがあることが明らかになっている。

 たとえば、佐賀大医学部附属病院の救命救急センターの井本佳織氏(写真)らが、2月末に横浜で開催された日本環境感染症学会で発表したところによると、N95マスクのエア漏れ率を比較した結果、マスクの種類によっては、指導後であっても「装着適正率」が24%と低いものがあることが分かった。また、初回指導から半年後に再度測定した結果、それぞれのマスクによって適正率は2〜18ポイントも低下しており、定期的なフィッティングチェックと装着指導の必要性が改めて示された。

 エア漏れ率は、柴田科学社製マスクフィッティングテスターを用い、粉じん漏れ率10%以下であれば適正(装着適正率)と判定した。調査の結果をみると、指導前に最も適正率が高かったのは、マスクBで78%だった。一方、マスクCは10%と少なかった(図1)。指導後は、マスクBがやはり高く90%となった。マスクAが78%、マスクCは24%だった。残念ながら、ここではマスクA、B、Cとしか表現できないが、マスクの種類によっては、「本当に大丈夫なのか」の答えに正しく応えられるマスクなのか、ご自身が使う予定のものを再度、検討した方がよろしいようだ。

 演者らは、「マスクの形状によっては、継続した装着方法の指導が必要なものと、初めての装着でも高い装着適正率が得られるものがあった」と結論しており、「N95マスクを選択する際は、複数を採用するのではなく、1つに絞り、装着の指導方法を確立した方が効果的である」などと考察していた。また、指導半年後に装着率は低下していたことから、定期的なフィッティングチェックと装着指導が重要と強調している点も参考にすべきだ。

図1 N95マスクの装着適正率

労働科学研究所の吉川徹氏

マスクによっては「適切な装着」が30%に届かない

 一方、N95/DS2マスクのエア漏れ率を比較したところ、マスクの種類によっては、指導後であっても「適切な装着」の割合が30%に達しない製品があることも分かった。N95/DS2マスクは、性能よりもコスト面から採用が決まる傾向にあるとの指摘もあり、実際に使用する医療関係者は、装着テストなどを通じて製品の性能を確認しておく必要がありそうだ。労働科学研究所の吉川徹氏(写真)らが検討したもので、3月29日から4月1日にかけて東京で開催された日本衛生学会で発表したものだ。 

 演者らが対象としたマスク(形状、被験者)は、マスクA(カップ型、65人)、マスクB(折りたたみ型、186人)、マスクC(カップ型接顔クッション付、189人)、マスクD(カップ型、30人)、マスクE(くちばし型、75人)だった。

 漏れ率は、労研式マスクフィッティングテスターMT-03型を使い測定した。測定方法は、1つのマスクにつき、(1)説明書を読まずに装着、(2)説明書を読んでから装着し、鼻の調整後、(3)さらに顎の調整後、(4)測定実施者との討論を経た後−−の計4回にわたって実施した。

 漏れ率は10%以下を「適切」と評価し、マスクごとに平均値を算出した。

 その結果、全体的には、初回から2回目、3回目、4回目と装着の経験を積むにつれて、漏れ率は改善し、適正装着率は上昇する傾向にあった。ただし、マスクによっては、4回目の測定時点においても、漏れ率10%以下だった被験者の割合(適正装着率)が27.3%と低いものがあった(図2)。一方で、初回時において、すでに適正装着率が74.1%と高いものもあった。

 適正装着率の低かったマスクについては、「指導を十分に行い、鼻のフィットの仕方やフィットテストを重ねても(適正な装着の)改善が難しいマスクの形状である」との評価となった。

 適切な着用への取り組みとして、フィットテストの実施や装着の指導などが欠かせないことが改めて示されたわけだが、。同時に、購入時点での製品評価も十分に行うべきであるとの注意を喚起する報告であった。

図2 漏れ率10%以下だった被験者の割合(適正装着率)