国立国際医療センター戸山病院国際疾病センターと同研究所国際臨床研究センターは5月28日までに、「新型インフルエンザ(豚由来H1N1)病原性と今後の推移について」を公表した。臨床的対応について検討し、国内でも季節性インフルエンザと同等の臨床的対応が現実的となってきたと結論している。

 研究グループはまず、WHOに報告された累積確定感染者数と累積死亡者数を国別で比較し、死亡例の大多数がメキシコに集中していることを確認した。

 次に、WHO発表の累積感染者数に対する累積死亡者数の割合を、メキシコ、メキシコ以外の国々とで分類し動向を追ったところ、
それぞれの地域で死亡者数の割合が低下して行く傾向がみられた。特に、メキシコ以外の国々の致死率は当初より低く、さらに5月7日以降は、0.16%以下を維持していた。

 考察では、メキシコで致死率が高かった理由について、たとえば、発生当事国であり準備不足だったことや、衛生状態や医療アクセス、医療レベルの実態、さらに病原性の高いウイルスの混在などの可能性が挙げた。その上で、真相解明には「今後の長期に渡る解析が必要」との見方を示した。

 一方、分析時点では、メキシコ以外の国の平均致死率は、5月7日以降、0.10〜0.16%の範囲でほぼ安定していると判断。新型インフルエンザの潜伏期間を最大約7日と仮定すれば、5月7日以降の低い致死率から、新型インフルエンザウイルス自体の病原性は「想定されていたより低い」とし、かつ、「パンデミックの危機的状況は回避されているとみなされる」とまとめた。

 今後については、新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会が5月16日に発表した「基本的対処方針」を引き合いに、その中で「対策の実施については柔軟で弾力的な運用を行う」と提言したことを踏まえ、「国際的なサーベイランスの実施」と「国内的には季節性インフルエンザと同等の臨床的対応をとることが現実的となって来たのではないか」と結論した。

 もちろん、前提として、基礎疾患(喘息、COPD、糖尿病など)を有する患者あるいは妊婦は、新型に感染すると、季節性インフルエンザと同様に重症化する危険性があるため、これらの基礎疾患を持つ人への臨床的対応を重視することは当然とした。

 同時に、「これまで検出されていない異なった病原性を持つウイルス株の出現に対する十分な備えは今後とも必要である」とも言及している。


■国立国際医療センターの戸山病院国際疾病センターと同研究所国際臨床研究センターの見解
新型インフルエンザ(豚由来H1N1)病原性と今後の推移について