神奈川県医師会理事の羽鳥裕氏

 神奈川県医師会も「新型インフルエンザ診療マニュアル」を作成、5月16日付でホームページなどで公開した。診断や治療など基本的には、大阪府と府医師会が公開したマニュアル(第2版、5月8日)と同じだが、この間の変更を更新したものになっている。また、「季節性インフルエンザが流行した場合」の検討課題を提示したのも特徴の1つだ。

 マニュアルは、県内の医療機関に向けて、今回発生した新型インフルエンザA/H1N1の診療方針を示したもの。5月15日現在のWHO、CDC、国立感染症研究所などの情報をもとに暫定的にとりまとめた。

 大阪府と府医師会のマニュアル(第2版)が公開された5月8日以降、たとえば停留措置は5月13日の段階で、すでに停留中の方を含め7日間に短縮された。また、健康監視も5月13日の段階で、健康状態の報告、外出自粛も7日間に短縮されている。神奈川県医師会ではこうした変更を反映するとともに、疫学情報や症例定義の情報更新にも対応している。

 取りまとめにあたった委員の1人である神奈川県医師会理事の羽鳥裕氏(写真)は、「(新型インフルエンザについては)これまでも県内の医療機関向けに情報提供を行ってきたが、断片的だったこともあり、行き届かない面もあったので、今回、診療マニュアルとしてまとめて提示することにした」などと話している。今後も、県内の医療機関向けて周知徹底を図っていくという。

 今回のマニュアルでは、「季節性インフルエンザが流行した場合」に向けた検討課題も提示した。たとえば、「秋になって季節性のインフルエンザも流行し出した場合、外来での新型と季節性の見分けはほぼ不可能である」との認識を示し、その対策が検討課題の1つとした。また、迅速診断キットの不足、ワクチンの供給量への不安、抗インフルエンザ薬の供給不足なども、季節性の流行前に検討しておくべき課題とした(表1)。

表1 季節性インフルエンザが流行した場合に向けた検討課題(神奈川県医師会)

1 現時点では水際作戦で特定海外旅行歴の有る無しで、初期対応を振り分けているが、国内2次感染、3次感染が出てきた場合は渡航歴の有無の判断基準はまったく成り立たなくなると思われる。秋になって季節性のインフルエンザも流行し出した場合、外来での新型と季節性の見分けはほぼ不可能であると考えられ、すなわち全ての感冒症状の患者を発熱外来に振り分けるのか、それ以前に医院待合室への入室をお断りせねばならなくなるのか。
2 季節性インフルエンザが流行した場合、迅速診断キットが不足することが予想される。患者との間でのトラブルが予想される。
3 秋までに新型インフルエンザワクチンが完成した場合、供給量不足の問題がある。さらに季節性のインフルエンザワクチンも希望する患者さんも多いと思われる。その場合、新型、季節性を2回ずつ計4回接種することになるのか。その場合、接種完了まで最低3カ月かかることになる。これも季節性インフルエンザの製造ラインを止めて作ると思われるので両ワクチンの供給の兼ね合いに不安が残る。
4 予防投与でタミフル等の処方が増え、実際の治療薬の不足が起きないか。予防投与でもし薬害が出た場合はどうなるのか。また10歳から20歳未満の投与原則禁忌が外れるのは新型インフルエンザだけなのか。

 こうした検討課題も含め、神奈川県医師会は今後も、行政などとの協議を進めていく方針だ。

神奈川県医師会
新型インフルエンザ診療マニュアル(第1版)