国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部信彦氏

 新型インフルエンザ豚インフルエンザ・A/H1N1)と既存のインフルエンザの両方を1剤でカバーする“4種混合”ワクチンの開発・製造は非現実的だろう――。国立感染症研究所感染症情報センターが4月30日午後に行った報道陣向けの説明会で、同センター長の岡部信彦氏らはこんな見方を示した。

 WHOのマーガレット・チャン事務局長が、日本時間の4月30日早朝、パンデミック警報のフェーズ5を宣言、メキシコ、米国を中心に急速な感染拡大が懸念されている中で、ワクチンの開発・製造に対する関心が高まっている。新型インフルエンザの流行を効果的に押さえ込むためには、通常のインフルエンザワクチンの製造ラインを新型に振り向けなければならないという判断もあり得るからだ。

 岡部氏は、インフルエンザワクチンの製造については、(1)現状維持:新型用ワクチンを作らず、通常インフルエンザワクチンだけを製造する、(2)切り替え:通常ワクチンを取り止め、新型用ワクチンだけを製造する、(3)併存:両方のワクチンを並行して製造する、という3つの選択肢があり得るという。ただし、(3)の選択肢では、両ワクチンとも製造量は減少することになる。

 今のところ、新型の豚インフルエンザは鶏などに対する強毒性はないとみられるため、ワクチン製造は通常ワクチンと同様、鶏卵を使って製造できるとみられる。では、3種類のインフルエンザ(H1N1ソ連型、H3N2香港型、B型)に対応している現行のインフルエンザワクチンに、もう1種類、新型インフルエンザの抗原を加えた4種混合ワクチンはできないのか。

 それなら、新型と通常のいずれのインフルエンザにも予防効果を発揮し、新型用ワクチンに切り替えたために、通常のインフルエンザにかかる患者が増加するというリスクを抑えられそうだ。しかし、岡部氏はこの“第4案”は困難とみる。

 「3種から4種にすると、たんぱく量が増え、副反応も増加する。不可能というわけではないが、製造するとなれば、新たに治験も必要になる。今回の流行への対応としては現実的でない」(岡部氏)。

 通常のインフルエンザワクチンの製造は、例年4〜5月にワクチン株を決定する。北半球における通常インフルエンザの流行期を考えると、「新型(豚インフルエンザ)と通常のインフルエンザのワクチン製造について、決断すべき時期は迫っている」(同氏)という。