日本小児科学会のシンポジム。奈良県新公会堂の能楽堂で行われた。

 H5N1型新型インフルエンザに備えるための流行前ワクチンプレパンデミックワクチン)の安全性や交叉免疫性について臨床試験を担当した国立病院機構三重病院小児科の庵原俊昭氏は4月19日、日本小児科学会のシンポジムで講演。その中で、プレパンデミックワクチンの「限界と期待」に触れ、今回の試験で「抗体応答は認めたが、臨床上の有効性は不明」などと言及した。

 庵原氏は「新型インフルエンザウイルスに対するワクチンの役割」と題して発表。昨年から取り組んできた「新型インフルエンザプレパンデミックワクチンの安全性、免疫源性および交叉免疫性に関する研究」の成果の概略を説明した。研究は、6000人規模で実施した「安全性試験」、200人を対象にした「初回接種試験」、さらに免疫的に初期済みの200人を対象にした「追加接種試験」の3つ。安全面では副反応は予測された範囲内だったが、対策面で期待された交叉免疫については、初回接種で「不十分」、追加接種で「示唆」という結果だった(関連記事)。

 追加接種で「交叉免疫が示唆」された点について庵原氏は、流行前ワクチンの「新たな使用方法を示せたのではないか」などと指摘した。現在のガイドラインではフェーズ4、つまり新型インフルエンザの発生が確認された段階で接種するとされている。しかし、備蓄している流行前ワクチンを実際に接種するまでには2カ月の製造期間が、さらに接種後にワクチン効果が現れるまで少なくとも3週間以上の時間が必要となる。新型インフルエンザが発生した初期に、こうしたタイムラグをどう乗り切るのかが課題となっている。

 今回、追加接種方式で一定の効果が期待できることが分かったことで、フェーズ4前に初回接種を実施しフェーズ4後に追加接種する方法も選択肢に加わったことになる。この方法だと、フェーズ4後に必要な2カ月の製造期間は変わらないが、ワクチン効果が現れるまでの時間が早まることが期待できるからだ。

 ただし、限界もある。

 庵原氏は「限界」の筆頭に、「新型インフルエンザウイルスの亜型が不明である点」を挙げた。備蓄している流行前ワクチンは、あくまでもH5N1型をターゲットにしたもので、H5N1以外が新型インフルエンザウイルスとして出現した場合には「効果は期待できない」のだ。

 また、今回効果判定に用いた指標は「抗体応答」であり、実際に臨床上の有効性を確認したわけではない。庵原氏も「新型インフルエンザが流行してみないと(流行前ワクチンの効果は)分からない」と認めている。

 流行前ワクチンの今後については、特に追加接種方式をどのように取り扱うかは、新型インフルエンザ専門家会議などの今後の議論を待たなければならない。

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