2009. 4. 2
今回は、発生段階別に展開される対策のうち、非医学的介入、抗ウイルス薬、ワクチンについてみてみたい。
改訂行動計画とガイドライン、さらには防衛医科大学校内科学講座2感染症教授の川名明彦氏の講演等よると、発生段階別でみた場合、「非医学的介入」がまず始動することになる(図1)。
図1 発生段階別でみた「非医学的介入」(防衛医科大学校内科学講座2感染症教授の川名明彦氏の講演から)
すでに取り組まれているのは、「家禽に関する防疫」や「在外邦人への情報提供」だ。第1段階(海外発生期)に入ると、「不要不急の渡航延期の勧告」が出され、同時に「検疫体制の強化」が図られる。
第2段階(国内発生早期)に入ると、本格的に「非医学的介入」が実施されることになる。いわゆる「Social distancing」(社会的隔離)を実行するものだ。
社会的隔離の有効性については、過去最悪のパンデミックだったスペイン・インフルエンザで実証済みだ。
1918年に発生したスペイン・インフルエンザでは、米国のフィラデルフィア市とセントルイス市の間で、そのの死亡率に大きな差があった(図2、参考文献1)。フィラデルフィアでは、1918年10月19日時点でピークとなり、死亡率は人口10万人当たり1万3000人以上に達した。一方、セントルイスでは、ピークはフィラデルフィアより2カ月近く遅い1918年12月14日だった。また、ピーク時での死亡率は、実にフィラデルフィアの4分の1以下だった。
図2 米国のフィラデルフィア市とセントルイス市でスペイン・インフルエンザの死亡率に大きな開き
この違いは、「社会的隔離」を実施したかどうかによる。セントルイスでは、1918年10月5日時点から「映画館、学校、会議場等の閉鎖」を実行していた。11月16日に閉鎖は解除されたが、効果は、死亡率のピークを遅らせただけでなく、ピークの山を低くするという形で現れたのだ。WHO西太平洋地域事務局長の尾身茂氏は、昨年末の東京講演で、「社会的隔離は確かな効果が期待できる」とし、ワクチン、抗インフルエンザ薬に並んで、社会的隔離が大事であると重ねて指摘していた。
学校、保育施設等の臨時休業については、1例目の患者が確認された段階で、各都道府県が「学校等の設置者に対して、臨時休業を要請する」。要請であるため、臨時休業を実施するかどうかの最終的な判断は設置者が下すことになるが、学校側としては事前に父兄らと話し合っておく必要があるだろう。
また、集会や催し物、コンサートなど不特定多数の人が集まる活動は開催自粛を求められ、一方で、一般市民に対しても「外出の自粛」「公共交通機関の利用自粛」が求められる。
あなたの街が「フィラデルフィアの失敗」を繰り返すのか、それとも「セントルイスの成功」を納めるのかは、ひとえに一般市民の理解と協力にかかっている。
2009. 4. 2
抗インフルエンザ薬、感染拡大期以降は予防投与を見合わせ
抗インフルエンザ薬については、「国民の45%に相当する量を目標として備蓄を推進」するとある。2008年時点で、タミフル2800人分とリレンザ135万人分を備蓄済みだ(図3)。この段階で国民の23%相当であり、今後45%を目指してさらに備蓄が進める手はずだ。
図3 発生段階別でみた「抗インフルエンザ薬」(防衛医科大学校内科学講座2感染症教授の川名明彦氏の講演から)
実際に使用する場面は、第2段階(国内発生早期)に訪れる。国内で発生した場合、その同居者、濃厚接触者、同じ職場にいる人、または医療従事者で十分な防御がないままに曝露した人に対して、抗インフルエンザ薬の予防投与が実施される。
ただし、感染拡大期以降は、同居者以外の濃厚接触者への予防投与は「原則として見合わせる」となっている。患者が多数出てくる段階では、抗インフルエンザ薬の使用目的を「予防」から「治療」へ切り替える必要があるからだ。もちろん、医療従事者や水際対策関係者への予防投与は継続される。
ワクチン接種についてのガイドラインは検討中
ワクチンについては、ガイドラインそのもののが検討中の段階にある。「ワクチン接種の基本的な考え方」や「先行的なワクチン接種の対象者とその接種順位」については、公表済み。今後、接種体制や費用負担などの面での検討を重ね、取りまとめる見込みだ。
ワクチンについては、流行前ワクチン(H5N1型対応、プレパンデミックワクチン)の取扱いと、流行ワクチン(パンデミックワクチン)の接種順位が大きな課題として残っている(図4)。
図4 発生段階別でみた「ワクチン」(防衛医科大学校内科学講座2感染症教授の川名明彦氏の講演から)
■参考文献
1)Collins SD, Frost WH, Gover M, Sydenstricker E: Mortality from influenza and pneumonia in the 50 largest cities of the United States First Edition Washington: U.S. Government Printing Office 1930.
2)WHOからの提案、死者数を減らす“社会的隔離”は必須
■お知らせ
テーマサイト「パンデミックに挑む」では、新型インフルエンザに関する皆様のご意見、ご要望等をお受けしたいと思います。新型インフルエンザに関する疑問点や解決しておきたい心配事、地元自治体の対策の進捗状況や一般市民が参加するイベント情報など、何でもかまいません。ぜひ情報をお寄せください。以下の画面からどうぞ。
https://aida.nikkeibp.co.jp/Q/C0064396G.html